研究課題/領域番号 |
19H03299
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
井上 真紀 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80512590)
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研究分担者 |
鈴木 紀之 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 准教授 (00724965)
川津 一隆 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (20747547)
山下 恵 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (70523596)
澤畠 拓夫 近畿大学, 農学部, 准教授 (80709006)
菊田 真吾 茨城大学, 農学部, 助教 (90718686)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 個体群生態学 |
研究実績の概要 |
(1) 局所スケールでのマイマイガおよび天敵の発生動態:2019年6月に、北海道美瑛町の市街地から山間部へと直線的に通る約25 kmの道路に沿って2 kmから6.7 kmごとに設定した6地点で個体数調査を実施した。マイマイガ幼虫は、山の麓にある中標高(地点5)、所謂「高原」で多く発生し、高標高の森林および低標高の市街地では少ないことが分かった。前年に比べ、2019年は個体数が全体的に少なかった。また天敵相のほとんどは寄生バエと寄生蜂であったが、地点5のみウイルス感染致死がみられた。 (2) 広域スケールでのマイマイガの発生動態: (1)の6地点それぞれに定点カメラを複数ヶ所設置したが、マイマイガの食害による落葉が観察できなかった。そこで、衛星画像データ解析による食害域・非食害域の識別が可能か調べるため、ドローンで撮影されたロシアでのマイマイガ大発生によるシラカバ林食害域周辺の斜め写真を基に、同時期に観測された衛星画像を解析した。この結果から、NDVI値の違いから食害の影響を識別できることが分かった。 (3) マイマイガの密度依存的な生態・生理的形質の変異:マイマイガ発生動態の不安定期における生態・生理的形質の変化を検出するため、室内で餌制限試験(通常の餌量の半分)と密度効果試験(異なる個体数で飼育)を行い、メスの各パラメータを計測した。またメス成虫の腹部につり糸を結び、羽ばたく時間を測定した。その結果、餌制限区では羽化後のメス成虫の体重が軽かったが、産卵後の体重には有意差がなかった。産卵数は餌制限区で対照区よりも有意に少なかった。一方、個体あたりの最大飛翔時間は餌制限区で長い傾向があった。密度効果試験の結果も同様であった。餌不足はマイマイガメスにおいて卵への投資を減少させ、より飛翔能力が高くなることにより、広域への分散を可能にしているかもしれない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野外実験、室内実験について順調に進めることができた。食害マップ作成において、国内での解析方法については今後検討が必要であるが、ロシアの食害による落葉の画像データを用いた解析については判別が可能であることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
予定していた調査地である北海道では、2019年に個体数が減少し、発生が終息しつつある可能性がある。しかし、関東近郊から中部地方にかけてマイマイガの個体数増加と大発生が始まったため、今後は調査地や調査方法を変更して計画通り研究を進める。
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