研究課題/領域番号 |
19H03308
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
松田 一希 中部大学, 創発学術院, 准教授 (90533480)
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研究分担者 |
半谷 吾郎 京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (40444492)
土田 さやか 中部大学, 応用生物学部, 講師 (40734687)
鎌田 昂 静岡理工科大学, 理工学部, 准教授 (40815859)
橋戸 南美 (鈴木南美) 中部大学, 創発学術院, 日本学術振興会特別研究員 (60772118)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 霊長類 / ボルネオ / テングザル / 乳酸菌 / 解毒 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ボルネオ島に同所的に生息する霊長類種の食物選択性を、①苦味知覚による植物毒回避と、②消化管内共生細菌による解毒という視点から解明することである。しかし、新型コロナウィルス感染症のため、海外における活動が実施できなくなったため、昨年度より日本国内で飼育されているボルネオ島固有種であるデングザルの複胃内共生細菌叢の研究を主として実施してきた。特に、飼育テングザルの前胃で発見された新種の乳酸菌(Lactobacillus nasalidis)に着目してきた。本年度は、既に収集していた野生個体前胃内容物の凍結乾燥試料からの細菌の分離培養を試み、飼育個体の胃内で発見していた新種の乳酸菌L. nasalidisを含む7種の細菌種の分離に成功した。野生、飼育どちらの個体の試料からもL.nasalidis、Streptococcus gallolyticusの2種の乳酸菌が分離できたため、この2菌種について植物二次代謝物質分解能や生理生化学性状を比較した。L.nasalidisは、最も近縁な種であるL. delbrueckii subsp. indicusとは異なり、野生・飼育個体由来のどちらの株も青酸配糖体アミグダリンを含む7種類の糖に対して高い分解性を示すことを発見した。また、飼育個体由来株は野生個体由来株に比べて高いNaCl抵抗性を示すことが明らかになった。今後さらに、これら種特異的な共生菌種が植物に含まれる毒の分解にどの程度寄与しているかを検討してく予定である。これら実験的な手法に加え、テングザルを含む複数の霊長類を対象として、消化管内の詳細な形態を明らかにするため、博物館に保管されている臓器標本の解剖学的研究も進めた。その結果、複胃を持つ霊長類種の3胃タイプと4胃タイプの胃の構造が明らかになり、複胃容量の違いと葉食傾向の差を解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国内で実施可能な研究については、概ね順調だといえる。しかし、新型コロナウィルス感染症により海外渡航が制限されているため、当初予定していた海外での研究計画は頓挫してる。現地の研究者とオンラインで打ち合わせをし、既に現地で集めた霊長類の糞サンプルの腸内細菌叢の網羅的解析などを開始したが、当初予定していた菌株の単離・培養については、現地での技術的な指導が必要なため実施できていない。以上のことから、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、飼育テングザルで発見した種特異的な共生菌種が植物に含まれる毒の分解にどの程度寄与しているかの実験を進めていく。また、現地マレーシアとのオンライン打ち合わせにより実施している、野生霊長類種の腸内細菌叢の網羅解析を更に進めていく。今後も海外への渡航が制限される可能性を考慮して、現地で収集した霊長類の糞サンプルからの味覚受容体解析も、現地で実施できるような体制を確立する。
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