研究課題/領域番号 |
19H03316
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
樋口 重和 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (00292376)
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研究分担者 |
太田 博樹 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (40401228)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 光環境 / 概日リズム / 夜勤・交代制勤務 / 睡眠 / メラトニン受容体 / 遺伝子多型 |
研究実績の概要 |
前年と同様のプロトコルで模擬的夜勤実験を実施した。被験者10名のデータを追加し、合計35名の若年成人男性のデータを解析に用いた。模擬的夜勤による概日リズム、眠気、パフォーマンスへの影響と先行研究で夜勤者の燃え尽き症候群と関連があることが報告されているメラトニン受容体1A遺伝子(MTNR1A)の近傍にあるrs12506228の一塩基多型と関連を調べた。実験は3泊4日とし、実験の1週間前から睡眠統制を行った。実験1日目は、概日リズム位相の指標であるメラトニンの分泌開始時刻(DLMO: Dim Light Melatonin Onset)を調べた。2日目は、21時から翌日の9時まで、12時間の模擬的夜勤を行った。夜勤中は精神課題を実施するとともに、眠気や疲労に関する自覚症状を調べた。3日目の夜は、夜勤による概日リズム位相の後退量を調べるために、1日目と同様にDLMOを測定した。DLMOの検出ができた28名について、Aアレル保有群(n=12)と非保有群(n=16)に分けて分析を行った。夜勤による概日リズムの位相は両群ともに有意に後退したが、後退量には群間で差があり、保有群の方が有意に大きかった。夜勤中の「眠気」は、両群とも有意に増加したが、群間に有意差は無かった。自覚症しらべの「だるさ感」は、非保有群では夜勤後半で有意に増加したが保有群では夜勤を通して変化しなかった。以上の結果から、先行研究で燃え尽き症候群と関連のあるとされているrs12506228のAアレル保有群は、一晩の模擬的夜勤で概日リズムの位相が後退しやすく、夜勤中の疲労に気がつきにくい可能性が高いことが示唆された。これらの成果について学会発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナ感染症の影響で2年間にわたって通常の実験実施が制限されたため、被験者の確保に時間がかかったが、最終的に延べ35名のデータを得ることができた。一塩基多型の解析も順調に終わり、異なる遺伝子型をもつ2群で比較したところ、先行研究を支持する結果を得ることができた。これらの研究成果を関連する国内学会で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
今までに得られた研究成果を国際会議で発表し、最終的には学術論文として投稿する。また、先行研究でメラトニン受容体1B遺伝子の多型が2型糖尿病と関連していることが明らかにされていることから、メラトニン受容体1B遺伝子の多型と夜勤による耐糖能の関係も同時に検討している。また、メラトニン受容体遺伝子以外の遺伝子が模擬的夜勤時の概日リズムや耐糖能に及ぼす影響についても検討する予定である。
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