研究課題
中枢神経系の興奮性シナプスにおける情報伝達は、グルタミン酸によって媒介される。グルタミン酸は、シナプス前終末に活動電位が到達するとカルシウムチャネルからカルシウムが流入することで放出されるが、このような直接的な放出機構だけでなく、シナプス前終末には小胞体などのカルシウムストアがあり、ここから放出されるカルシウムによっても修飾を受けると想定されているが、その実体についてはほとんど明らかになっていない。また、シナプス後部では、やはりグルタミン酸受容体のNMDA受容体を介して流入するカルシウムにより長期増強などのシナプス可塑性が誘導されるが、ここでも細胞内カルシウムストアの役割についての報告は少ない。これらの点を検討するために、マウス海馬の急性スライス標本を用いて、おもに電気生理学的解析を進めた。シナプス前終末特異的な遺伝子改変マウスを用いて、細胞内カルシウムストアからのカルシウム放出を調節すると考えられる分子Xの役割を、電気生理学の技術を用いて検討したところ、分子Xのシナプス前終末特異的ノックアウトマウスでは、5Hz刺激により誘導される短期的なシナプス可塑性が増大し、分子Xが神経伝達物質の放出を制御していることが明らかとなった。また、シナプス後細胞特異的に分子Xをノックアウトしたマウスでは、100Hz1秒の高頻度刺激により誘導される長期増強が減弱することがわかった。これらの結果から、分子Xがシナプス伝達の調節に重要な役割を果たしていることが明らかになった。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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