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2020 年度 実績報告書

可塑性制御因子Arcの逆シナプスタグ機構に基づく大脳認知記憶制御の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19H03328
研究機関鹿児島大学

研究代表者

奥野 浩行  鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (80272417)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードシナプス可塑性 / 神経活動依存的遺伝子発現 / 認知機能
研究実績の概要

認知活動にともなうシナプス活動に応答して一過的な発現上昇を示す神経可塑性制御遺伝子Arcは記憶をはじめとする大脳認知機能の維持に本質的な役割を担っており、Arc依存的な分子機構破綻は認知症や精神疾患との関連が示唆されている。これまで申請者らは遺伝子産物であるArcタンパク質の機能解析を進めてきた。その結果、Arcタンパク質は活性の低いシナプスに選択的に集積して神経伝達効率の調節を行うことを見出し、新しい概念”逆シナプスタグ機構”を提唱してきた。本研究ではこれまでの研究をさらに発展させ、Arcがどのように個々のシナプスや神経細胞の性質を変化させ、その結果、どのように認知機能を調節するのか?というシナプスレベル、細胞レベルの本質的なメカニズムに関してあきらかにし、学習や経験による神経細胞回路再編成を介した認知機能の調節メカニズムを理解することを目的とする。本年度は、Arc欠損マウスにおいて1ヶ月以上持続する記憶(遠隔記憶)に特異的な障害のメカニズムを調べるため、Arc欠損マウスの遠隔記憶障害の責任脳部位を探すため、Arcレポーターマウスと欠損マウスの二重遺伝子改変マウスを作成した。また、Arcの機能を脳部位特異的および時間特異的に阻害するためのアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを開発した。さらに、前年度確立したマウス用視覚弁別課題を基に、繰り返し逆転学習プロトコールを開発した。この課題はArcの実行機能に対する効果を調べるために有効であると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

実験計画の各項目について順調に結果が得られている

今後の研究の推進方策

最終年度は以下の計画で研究を進める。まず目標1の「Arcの逆シナプスタグによるシナプス制御機構の解明」に関しては、これまで得られたライブイメージングデータに対して画像解析・統計解析を行い、長期シナプス可塑性の発現や維持におけるArcの役割を考察する。目標2「Arcによる記憶の長期化遷移プロセスの調節機構の解明」では昨年作成したArcレポーターマウスと欠損マウスの二重遺伝子改変マウスを用い、1カ月以上保たれる長期記憶(遠隔記憶)に関係する脳部位を探索する。目標3「Arcによる実行機能調節機構の解明」においては視覚弁別繰り返し逆転学習課題を用いてArc欠損マウスにおける逆転学習障害を評価する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [国際共同研究] Nenki Institute of Experimental Biology(ポーランド)

    • 国名
      ポーランド
    • 外国機関名
      Nenki Institute of Experimental Biology
  • [雑誌論文] Rpd3/CoRest-mediated activity-dependent transcription regulates the flexibility in memory updating in Drosophila.2021

    • 著者名/発表者名
      Takakura M, Nakagawa R, Ota T, Kimura Y, Okuno H, Hirano Y
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 12 ページ: 628

    • DOI

      10.1038/s41467-021-20898-x

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Cooperation of LIM domain-binding 2 (LDB2) with EGR in the pathophysiology of schizophrenia.2021

    • 著者名/発表者名
      Ohnishi T, Kiyama Y, Arima-Yoshida F, Kadota M, (途中22名省略), Okuno H, Bito H, Itokawa M, Kuraku S, Manabe T, Yoshikawa T.
    • 雑誌名

      EMBO Mol Med

      巻: 13 ページ: e12574

    • DOI

      10.15252/emmm.202012574

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 古い記憶想起における海馬歯状回記憶痕跡細胞の関与2020

    • 著者名/発表者名
      奥野浩行
    • 学会等名
      日本神経化学会大会
    • 招待講演

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公開日: 2021-12-27  

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