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2020 年度 実績報告書

興奮性神経伝達物質グルタミン酸のシナプス小胞再充填機構の包括的解明

研究課題

研究課題/領域番号 19H03330
研究機関同志社大学

研究代表者

高森 茂雄  同志社大学, 脳科学研究科, 教授 (10397002)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード神経伝達物質・受容体 / シナプス小胞 / シナプス伝達 / VGLUT / グルタミン酸
研究実績の概要

哺乳類脳神経系における興奮性シナプス伝達は、シナプス小胞からのグルタミン酸の活動依存的な放出によって支えられている。本研究課題では、グルタミン酸のシナプス小胞への再充填を司る小胞型グルタミン酸トランスポーター(VGLUT)に焦点をあて、そのシナプス伝達における機能と、活動依存的な動態変化の分子メカニズムを明らかにすることを目的としている。本年度の主な研究成果は以下の通りであった。
(1)【VGLUT発現量がシナプス伝達に及ぼす影響の解明】VGLUT1欠損マウスの聴覚系巨大シナプスの電気生理学的な特性を精査した。当該シナプスはVGLUT1とVGLUT2の両方を発現しているが、VGLUT1欠損シナプスにおける基本的なシナプス伝達については大きな差異を示さなかった。一方、欠損シナプスでは、シナプス小胞へのグルタミン酸充填速度が野生型の25%程度に低下していた。また、100 Hzで連続した際にVGLUT1欠損シナプスは有意に高いシナプス伝達不全を呈した。これらの成果から、VGLUTの発現量が再充填速度を規定し、シナプス伝達の律速段階となり得ることを提唱した。
(2)【VGLUTの活動依存的な改修機構の分子基盤の解明】VGLUT1-C末端に存在し、クラスリンとの結合を仲介するAP-2結合部位について、クラスリン非依存的なエンドサイトーシスが起こる条件における役割を検討した。興味深いことに、AP-2との結合能を減弱させたVGLUT1変異体は、クラスリン非依存的なエンドサイトーシス時においても、その回収が顕著に遅くなった。また、AP-2欠損ニューロンにおいてもVGLUT1の回収が遅くなった。VGLUT1以外のタンパク質についても同様の解析を行った結果、AP-2には積荷タンパク質選択的かつクラスリン非依存的に小胞タンパク質の回収効率を制御している可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度計画していた研究項目について、順調に研究成果を積み重ね、上記(1)はCell Reports誌に発表した。上記(2)については、予定していた実験は既に終了しており、論文投稿に向けて海外共同研究者(Volker Haucke博士, FMP-Berlin)との調整中である。シナプス小胞の蛍光イメージングによる可視化実験を用いた共同研究についても、既にPNAS誌に発表しており、他にも論文発表を念頭においた研究成果を順調に蓄積できている。一方、当初の研究項目として掲げていた単一シナプスにおけるグルタミン酸イメージングや新しい蛍光プローブ開発については、実験系の確立に一定の目処が立っており、次年度以降への発展が見込まれる。以上のように、本研究計画はおおむね順調に進展していると判断する。

今後の研究の推進方策

上記の通り、本研究計画で推進している各研究項目で成果が蓄積しており、次年度も継続して論文化の努力をしていく。目標として、最終年度内に三報の原著論文と、一報の総説の発表を設定する。また、これまでの研究成果から、新たに二つの興味深い可能性が浮上してきた。すなわち、(1)小胞の再充填速度よりも、小胞の再利用に要する時間が短い可能性(=小胞再充填速度がシナプス伝達の律速となる可能性)、(2)頻回刺激が持続した場合、小胞の再充填速度が亢進する可能性(=活動依存的に再充填速度に可塑性が存在する可能性)、の二点である。後者については、現状の研究手法で解決するのは困難であるが、(1)について、電気生理学的な手法を用いて新たに検討する予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2020 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件)

  • [国際共同研究] マックスプランク実験医学研究所/ベルリン分子薬理学研究所/マックスプランク生物物理学研究所(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      マックスプランク実験医学研究所/ベルリン分子薬理学研究所/マックスプランク生物物理学研究所
  • [雑誌論文] Hidden proteome of synaptic vesicles in the mammalian brain2020

    • 著者名/発表者名
      Taoufiq Zacharie、Ninov Momchil、Villar-Briones Alejandro、Wang Han-Ying、Sasaki Toshio、Roy Michael C.、Beauchain Francois、Mori Yasunori、Yoshida Tomofumi、Takamori Shigeo、Jahn Reinhard、Takahashi Tomoyuki
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences

      巻: 117 ページ: 33586~33596

    • DOI

      10.1073/pnas.2011870117

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Vesicular Glutamate Transporter Expression Ensures High-Fidelity Synaptic Transmission at the Calyx of Held Synapses2020

    • 著者名/発表者名
      Nakakubo Yutaro、Abe Saeka、Yoshida Tomofumi、Takami Chihiro、Isa Masayuki、Wojcik Sonja M.、Brose Nils、Takamori Shigeo、Hori Tetsuya
    • 雑誌名

      Cell Reports

      巻: 32 ページ: 108040~108040

    • DOI

      10.1016/j.celrep.2020.108040

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Cargo-selective sorting function of clathrin adaptor protein AP-2 during clathrin-independent endocytosis at hippocampal synapses.2020

    • 著者名/発表者名
      Takenaka K, Lopez-Hernandez T, Mori Y, Nagamori S, Haucke V, Takamori S.
    • 学会等名
      第72回日本細胞生物学会大会
  • [学会発表] Intersectin 1が形成する液滴は、SNAP-25によって形質膜に係留されたエンドサイトーシス関連タンパク質の貯蔵庫として働く.2020

    • 著者名/発表者名
      吉田知史、竹中康一郎、塙京子、森靖典、高森茂雄
    • 学会等名
      第72回 日本細胞生物学会.
  • [学会発表] Cargo-selective sorting function of clathrin adaptor protein AP-2 during clathrin-independent endocytosis at hippocampal synapses.2020

    • 著者名/発表者名
      Takenaka K, Lopez-Hernandez T, Mori Y, Nagamori S, Haucke V, Takamori S.
    • 学会等名
      生理学研究所 シナプス研究会
  • [学会発表] 形質膜に係留されている ITSN1 によって形成される相分離環境はエンドサイトーシス関連タンパク質の動的な貯蔵庫として機能する.2020

    • 著者名/発表者名
      吉田知史
    • 学会等名
      生理学研究所 シナプス研究会
  • [学会発表] Cargo-selective sorting function of clathrin adaptor protein AP-2 during clathrin-independent endocytosis at hippocampal synapses.2020

    • 著者名/発表者名
      Takenaka K, Lopez-Hernandez T, Mori Y, Nagamori S, Haucke V, Takamori S.
    • 学会等名
      JSPS Core-to-core Program Symposium “Nanobiology of neural plasticity based on optical nanoscopy”
    • 国際学会
  • [学会発表] Intersectin 1 condensates, the reservoir for various endocytic proteins, are anchored at plasma membrane by SNAP-25.2020

    • 著者名/発表者名
      Yoshida T.
    • 学会等名
      JSPS Core-to-core Program (A) Symposium “Nanobiology of neural plasticity based on optical nanoscopy”
    • 国際学会

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公開日: 2021-12-27  

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