研究課題/領域番号 |
19H03335
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
井上 謙一 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (90455395)
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研究分担者 |
小池 康晴 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (10302978)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 神経科学 / 脳・神経 / ウイルスベクター / 解剖学 / 手続き学習 |
研究実績の概要 |
本研究では、新規開発するウイルスベクターシステムによる入出力同時解析法や、神経路選択的な機能介入等の先端的ネットワーク解析法を駆使し、手続き学習に着目して、大脳皮質―大脳基底核ループ回路の機能的役割とその動作原理を解明するための研究を行なっている。今年度は、前年度開発のベクターより更に感染伝播速度を低下させた高発現型狂犬病ウイルス(RV)ベクターの開発を行い、複数の異なる感染伝播速度を有するベクターを得ることに成功した。現在これらのベクターの伝播能の紹介解析を進めるとともに、注入実験の為の大量調整を行っている。また、Tet-Off法を利用した超高発現型AAVベクターの遺伝子発現スピードをさらに向上させることを試み、これに成功した。今後開発したベクターを用いて、逆行性越シナプス的トレーシングと、軸索トレーシングの同時適用による入出力同時解析法を確立し、大脳皮質・大脳基底核ループの構築様式の解析に適用する。さらに、逆行性ラベルを半自動的に解析する手法の構築に関しては、AIを利用して、少ない教師データで全脳のラベルを高精度で推定するアルゴリズムの開発に成功した。進展が得られている。一方で、研究分担者の東京工業大学小池教授と共同で、詳細かつ精微な運動の自動解析を可能とする、力覚フィードバックデバイス(Spider)を利用した迷路課題装置をおおむね完成させた。今後ヒトおよびサルで、手続き学習課題としてカーソルを正しい経路でゴールまで動かすと報酬が得られる迷路課題を実施し、デバイスの検証を行うと共に、マカクサルでは手続き学習仮定の神経活動記録を開始する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書の研究の目的および実施計画欄に記載した、高発現型狂犬病ウイルス(RV)ベクターの開発、同ベクターと超高発現型アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを利用した入出力同時解析法の開発については、想定外の結果が生じ追加の開発が必要となったものの、目的の性能を有するベクターを既に得ており、おおむね順調に進行している。また、逆行性ラベルを半自動的に解析する手法の構築に関しても大きな進展が得られた。さらに、力覚フィードバックデバイス(Spider)を利用した迷路課題装置の開発についても想定外の問題点などにより当初予定から追加の開発が必要になったものの、この開発によりほとんどの問題が解決して装置はほぼ完成したため、おおむね順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究はおおむね順調に進展していると考えられるため、今後も当初予定に従い、前年度開発を行なった感染速度低下型・高発現型RVベクターを用いた逆行性越シナプス的トレーシングと、Tet-Off法を利用した超高発現型AAVベクターによる軸索トレーシングの同時適用による入出力同時解析法を、ラベルの半自動的解析手法に関する改良を行ないつつ、大脳皮質・大脳基底核ループの構築様式の解析に適用する。また、前年度開発した力覚フィードバックデバイス(Spider)を利用した迷路課題装置を利用してヒトおよびサルの行動(上肢運動および眼球運動)データを記録し、同課題における運動学習パターンの解析を行なうとともに、改題遂行中のサルからの神経活動記録を開始すると共に、特定神経路への機能介入を試みる。
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