研究課題/領域番号 |
19H03336
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
窪田 芳之 生理学研究所, 脳機能計測・支援センター, 准教授 (90192567)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 大脳皮質 / 運動学習 / 神経回路 / リモデリング / 光顕-電顕相関法 / 記憶 / 可塑性 / 視床 |
研究実績の概要 |
電子顕微鏡による大規模電顕画像3次元再構築処理法と光学顕微鏡観察法を相関させ、マウスの運動学習に伴う大脳皮質第一次運動野(M1)の神経回路変化を解析した。運動学習に伴い形成される新規のシナプス入力の由来が大脳皮質錐体細胞であるか視床の神経細胞であるかを明らかにした。大脳皮質錐体路細胞にGFPが発現する遺伝子改変マウス(Thy1-M系統)を用いて、種掴み運動課題を、毎日30分間10日間にわたり学習させた。M1の前肢領域上に頭蓋窓を作製し、毎日、課題トレーニング直後、同一の錐体細胞樹状突起セグメント(10-20箇所)を2光子励起顕微鏡下で生体観察し、棘突起の新生と消失を観察した。学習前、習得期、完成期の動物を灌流固定し、M1前肢領域の脳切片を作成する。VGluT1(vesicular glutamate transporter type 1; 錐体細胞の神経終末マーカー)、VGluT2(視床-皮質神経終末マーカー)、Homer(興奮性シナプス後膜マーカー)、GFP(錐体路細胞蛍光マーカー)に対する蛍光4重染色を行い、共焦点レーザー顕微鏡で観察した。生体観察した棘突起上で、Homerに接触するシナプス前終末マーカーを同定した結果、習得期には、新生棘突起にシナプスを形成する神経終末の多くが、大脳皮質2次運動野(M2)由来であること、完成期にはそれが消失するが、視床由来の神経終末の入力を受けている棘突起は残存し、大きくなっていることを見出した。さらに、化学遺伝学的手法で、その2つの興奮性入力経路の活動抑制した結果、M1投射M2神経細胞が学習の上達に深く関与している一方、M1投射視床神経細胞がその熟練運動の遂行を担っていることを認めた。本研究成果をまとめ、Science Advancesに2022/7に論文報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍のための入国規制が徐々に緩和されたことを受けて、2022/5に高速電顕撮影機器をアメリカより輸入し、その導入設置を完了した。高速電顕画像撮影装置による画像撮影を実施し、大容量電顕画像データを獲得した。その画像のアラインメントや神経要素の3次元再構築に取り組んでいることから、当初の目的は達成したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
継続して、電顕画像データを取得し、引き続き、データ解析し、学習課題遂行時にM1で生じる神経回路の付け替えに関する知見を蓄積する。
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