研究課題/領域番号 |
19H03341
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
山口 正洋 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 教授 (60313102)
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研究分担者 |
谷口 睦男 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 准教授 (10304677)
村田 芳博 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (40377031)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 嗅覚 / 連合学習 / 嗅結節 / シナプス可塑性 / 局所電場電位 / 神経調節因子 |
研究実績の概要 |
研究代表者は、マウスの「嗅結節」には匂い学習によって誘引行動をとる際に活性化する前内側ドメインと、忌避行動をとる際に活性化する外側ドメインが個別に存在することを明らかにした。本研究では、これら機能ドメインの活性化に至る神経可塑性メカニズムを、末梢性および中枢性シナプス入力の機能ドメイン特異的な強化と、シナプス入力強化における神経調節因子の役割から明らかにする。本年度は、 ①梨状皮質からの中枢性シナプス入力を光遺伝学により活性化し、これをえさ報酬と結びつける誘引学習、電気ショックと結びつける忌避学習により、光刺激に対して誘引行動、忌避行動をとる学習系を確立した。嗅結節に留置した記録電極から局所電場電位を記録し、誘引行動学習を行ったマウスでは光刺激に対する電気応答が嗅結節外側ドメインに較べて前内側ドメインで優位に増強することを見出した。中枢性シナプスがドメイン特異的な機能的可塑性を持つことが判明した。 ②嗅球からの末梢性シナプス入力を光遺伝学をにより活性化し、えさ報酬と結びつける誘引学習、電気ショックと結びつける忌避学習により、光刺激に対して誘引行動、忌避行動をとる学習系を確立した。嗅結節に留置した記録電極から局所電場電位を記録し、誘引行動学習を行ったマウスでは光刺激に対する電気応答が嗅結節外側ドメインに較べて前内側ドメインで優位に増強することを見出した。末梢性シナプスがドメイン特異的な機能的可塑性を持つことが判明した。 ③神経調節因子としてオレキシンシグナルに着目し、オレキシン受容体アンタゴニストの嗅結節前内側ドメインへの局所投与によって、嗅覚刺激による誘引行動が抑制されるのみならず忌避行動が促進されることを見出し、前内側ドメインが神経調節性シグナルに応じて誘引と忌避の双方を制御しているという新たな可能性を提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に挙げた、1.匂い情報を伝える末梢性シナプス入力の機能ドメイン特異的な強化 2.他領域からの連合性シナプス入力の機能ドメイン特異的な強化 3.シナプス入力強化における神経調節因子の役割について、概ね順調に解析が進展しているため。
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今後の研究の推進方策 |
光遺伝学を用いた電気生理学的解析から、末梢性、中枢性シナプス入力ともに学習に応じた機能的なドメイン特異的可塑性という性質を持っていることが判明した。そこで更に、それぞれのシナプスの構造的なドメイン特異的可塑性について、シナプス末端の構造解析によって明らかにする。また、それぞれのシナプス入力の機能的可塑性を詳細に比較検討するため、嗅結節のスライスを作成して、in vitroで末梢性・中枢性シナプス入力を個別に活性化する実験系を確立し、その電気応答性、光刺激応答性、神経調節性シグナルの働きに関する解析を開始する。また、それぞれのシナプス入力の可塑性を比較検討する新たな観点として、誘引行動から忌避行動への反転学習という高い可塑性を必要とする学習系を導入し、それぞれのシナプス入力の関わりを解析する。
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