研究課題
天然物を基盤とする創薬研究における、必要な天然物の誘導体を「いかにして迅速かつ網羅的に合成するか?」という至上命題に対して、①パラレルフラグメント連結戦略による迅速かつ網羅的なライブラリー供給と生物活性評価と、発展型である②動的コンビナトリアル合成戦略による活性化合物のテーラーメード合成の2つの柱からなる新たな天然物創薬プラットホームの構築を行う。本年度は、ヌクレオシド系抗菌天然物であるツニカマイシン・ムライマイシンを対象として、研究項目①パラレルフラグメント連結戦略を検討した。両化合物に共通するウリジン部を「コア」、アシル基を「アクセサリー」として、それぞれのフラグメントを合成した(コア部は各化合物2個ずつ、アクセサリー部は92個)。次に、各フラグメントの連結を96穴プレート上で行い、ツニカマイシン・ムライマイシン誘導体の小規模ライブラリーをパラレル合成した。この際に、最低限必要な量の「コア」と「アクセサリー」の検討や、各ウェル内でヒドラゾン形成反応の進行と収率をLC-MSにて確認した。両フラグメントによる生物活性評価条件でのヒドラゾン形成反応条件、同条件下におけるヒドラゾン体の安定性についても検討した。その結果、抗菌活性測定ジの培地条件下では、化合物は純分安定に存在する事を確認した。一方で、細胞や細菌の培養液中では、24時間で30~40%程度の化合物の分解が起きている事もわかった。ヒドラゾン形成反応条件とその安定性に関する知見を得たため、ツニカマイシン・ムライマイシン誘導体の大規模ライブラリー(各184個づつ)を一挙にパラレル合成した。その結果、親化合物を上回る抗菌活性を示す誘導体を複数同定する事ができた。ツニカマイシン・ムライマイシンは、グラム陽性菌にしか抗菌活性を示さないが、緑膿菌を含むグラム陰性菌にも抗菌活性を示す誘導体も同定する事が出来た。
2: おおむね順調に進展している
昨年度のコリスチンライブラリー構築の成功に続き、ケモタイプの全く違うツニカマイシン・ムライマイシン誘導体の大規模ライブラリー(各184個づつ)構築もの適用する事が出来たうえに、親化合物を上回る抗菌活性を示す誘導体を複数同定する事ができたため。
ライブラリー供給と生物活性評価と、発展型である②動的コンビナトリアル合成戦略による活性化合物のテーラーメード合成の2つの柱からなる新たな天然物創薬プラットホームの構築を行う。①②にて同定された誘導体について、さらなるドラッグデザインによる積極的な構造の単純化や機能化を行うことで、高活性化、代謝安定化能を付与するような化学修飾を施し、真の創薬リードへと変換する。最終的には、薬剤耐性菌感染症とがんを対象疾患として設定し、これらに対する天然物創薬リードの創製を目指す。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 3件)
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