研究課題/領域番号 |
19H03347
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岩渕 好治 東北大学, 薬学研究科, 教授 (20211766)
|
研究分担者 |
笹野 裕介 東北大学, 薬学研究科, 講師 (10636400)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 合成化学 / 化学選択性 / ニトロキシルラジカル / ハイブリッド触媒 / 不斉合成 |
研究実績の概要 |
本研究は、「有機ニトロキシルラジカルー遷移金属ハイブリッド触媒システム」に潜在する合成化学的機能性の開発とその有用性の実証を3年に亘る計画研究として実施するものである。その2年目にあたる当該期間では、初年度に得られた成果を踏まえて、常温・常圧の分子状酸素の活性化して官能基共存性に優れた酸化的分子変換の基盤となる、化学選択的電子伝達系の構築を推進した。具体的には、初年度の検討で獲得した構造活性相関情報を踏まえて、多座配位型ニトロキシルラジカル誘導体を触媒として vic-アミノアルコールおよびvic-ジオールの対応するカルボニル化合物への効率的空気酸化を精査した。その結果、その結果、対応するカルボニル化合物を良好な収率で与える触媒反応条件を特定するとともに基質適用性を明らかにすることができた。また、本反応を適用して抗コリン性鎮痙薬臭化プリフィニウムの初のエナンチオ選択的な合成を達成することができた。一方、触媒的分子内フェノールカップリング反応へ展開を追究した結果、分子内脱芳香族的フェノールカップリング反応を進行させる遷移金属イオンとしてCrが最適であることを見出し、Cr-キラルsalen錯体の組み合わせにより、所望の本反応をエナンチオ選択的に進行させることが可能であることも確認した。また、ニトロキシルラジカル-Cr-salen協奏触媒は、既存のいかなる反応剤でも実現困難な含硫黄基質の酸化的脱芳香族フェノールカップリングを進行させるという優位性を持つことを明らかとした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有機ニトロキシルラジカルと銅イオンから成るハイブリッド触媒の反応性を精密に制御する方法を見出し、これにより従来は適用出来なかったvic-アミノアルコールのアルコール選択的酸化反応の適用性拡張することに成功た。また、未解決の課題となっていた、ビスフェノール基質の分子内酸化的脱芳香族フェノールカップリング反応について検討を重ねた結果、クロムイオンとsalen錯体との協奏触媒を見出し、その機能最適化を実現して国際的学術誌にその成果の一部を報告することができた。以上より、本研究は概ね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
2年間の検討を通じて得られた知見を統合して、各々の触媒反応系において、光学活性基質への適用とフィードバック検証、密度汎関数法に基づく量子化学計算を取り入れて、モデルの精密化を図る。3年計画研究の最終年度は、これまで獲得した触媒システムの有用性を実証するべく、生物活性化合物の短工程での環境調和した合成に向けた検討を開始する。さらに、アルコールやフェノール以外の官能基を基点とした新規かつ有用な酸化的分子変換への展開についても検討を行う。
|