研究課題/領域番号 |
19H03350
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高須 清誠 京都大学, 薬学研究科, 教授 (10302168)
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研究分担者 |
服部 明 京都大学, 薬学研究科, 准教授 (50300893)
山岡 庸介 京都大学, 薬学研究科, 助教 (60624723)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ひずみ化合物 / C-C結合開裂 / 酸化 / 多環芳香族化合物 |
研究実績の概要 |
【目的】分子ひずみを持つ化合物は、反応化学的、構造化学的にも興味が持たれる対象である。小員環化合物はひずみエネルギーを持つため,温和な反応条件においても速やかに反応することができるが,通常の状態では安定に存在し単離可能な場合も多い.我々は、ひずみ化合物の特性の理解を深めるため、ひずみ化合物の合成法の開発、ひずみ化合物の反応性を利用した新たな合成化学的利用、および生体機能分子設計への展開について研究を進めている。 【方法】我々がすでに合成法を報告している芳香族縮ビシクロ[4.2.0]オクタノール1は、酸性や塩基性の刺激を与えるとひずみエネルギーの解消を駆動力として種々の分子変換が進行するが、ここでは酸化剤でどのような反応が進行し、生成物の性質にどのような変化がみられるか検討することとした。具体的には、酸化剤として超原子価ヨウ素反応剤および次亜塩素酸を用いて検討を行った。 【結果】酸化剤として(ジアセトキシヨード)ベンゼン (PIDA)を用いたところ、1は速やかに反応が進行しフラン環をもつ多環芳香族炭化水素2を与えた。この際、π共役が拡張することで、生成物の紫外可視吸収スペクトルは基質に比べ長波長シフトすることが明らかとなった。一方、酸化剤として次亜塩素酸を用いたところ、1は塩素化体3に良好な収率で変換されることが分かった。3は化合物2が脱芳香族的クロロ化(酸化)されて得られることも明らかになっった。この分子変換を利用すると、酸化刺激を与えることにより光学的にOFF/ONの信号変換する物質の創製が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ禍の影響で全体的に研究時間が制限され、研究計画通りに実施できなかった。さらに、本研究への参画を予定していた学生が体調不良等を理由に休学したことも影響が大きい。
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今後の研究の推進方策 |
計算科学などのdryの研究にも注力することで、新型コロナ禍の中でも研究が進捗できるように工夫する。また、研究班を再編成し、当初予定していた中員環化学の研究の進展を図る。以下の研究を予定する。 ・電子環状反応を利用した中院間合成において、不安定中員環の金属錯体形成による捕捉の実施。 ・新しく開発したエノラート―オレフィンメタセシスの確立とその応用 ・彎曲したグラフェンナノリボンの創製
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