薬物を構成する元素を生体内に存在しないフッ素で置換するとしばしば親化合物の体内動態、代謝安定性および標的分子との親和性が改善される。創薬においてフッ素置換はよく検討されるが、フッ素化合物の合成法は発展途上である。我々は、これまでほとんど知られていなかったアルケンをはじめとする不飽和化合物の不斉フッ素化反応の実現を目指し、ジアニオン性相間移動触媒を設計・開発した。カチオン性フッ素化剤との組み合わせにより系内で発生させたキラルなフッ素化剤は、アルケンのフッ素二官能基化およびヒドロキシアレーン類の脱芳香族型フッ素化に適用でき、光学活性な新規フッ素化合物群の創出を可能とした。
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