本年度は赤色-近赤外制御ケージドNOの開発を実施し、有効なケージドNO化合物の開発に成功した。これまでに、色素の励起に基づく光誘起電子移動反応(PeT)を鍵反応としてNO放出反応を開発してきた。この方法論は色素部を置換してもPeTを誘起できれば共通の反応によりNO放出する拡張性の高い反応機構である。これまで色素部を、Rhodamine、Si-Rhodamineに置換し赤色光によりNO放出が起こることを示した。さらにTe-RhodamineおよびSe-Rhodamine(ともに600nm程度)を用いた新たなPeT型ケージドNOの開発を行い、Te-Rhodamine(600nm)およびTelluroxide-Rhodamine(660nm)置換ケージドNOがNO放出することを見出した。一方で、Phospha-Rhodamineを導入した化合物ではNO放出は見られないことを明らかにした。本年度は、Si-Rhodamine、Te-RhodamineおよびTelluroxide-RhodamineタイプのNO放出剤について生物活性評価を行った。Si-Rhodamineタイプについてラット大動脈切片を用いたマグヌス試験を実施したところ、光照射によって血管弛緩作用を再現できることが示された。またin vivo実験については、共同研究者が有するラット血管弛緩実験系を用いて光照射による血圧変化を検証し、全身血圧に影響を与えず局所血圧を制御できることを示した。Te-Rhodamineについてもex vivo系で血管弛緩作用が見られた。 ナノ粒子型ケージドNOについては、長波長タイプとしてTe-RhodamineとNO放出化合物の組み合わせを検討したが、蛍光プローブの反応は見られたもののNO放出が起こる明確な結果は得られなかった。
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