研究課題/領域番号 |
19H03355
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
椿 一典 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (50303897)
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研究分担者 |
今吉 亜由美 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 助教 (20786462)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 蛍光色素 / CPL / 励起状態 / 基底状態 |
研究実績の概要 |
呈色/蛍光色素の研究は、実用を強く志向した開発研究が多数を占めるが、今回、我々は ①生体を指向した新たな蛍光色素骨格の開発、 ②蛍光色素の精密配置に基づいた円偏光発光 (CPL) 材料の開発、 ③色素を用いた新たな有機化学の創出 の三点を目標とし、呈色/蛍光色素研究を基盤とした研究を行った。①については、蛍光色素であるフルオレセインのキサンテン環の左右にベンゼン環をひとつずつ(一つは、キサンテン環の伸長方向に、他方はキサンテン環の伸長方向からずれた方向に)追加した、L字型のジナフトフルオレセインを合成した。その際、L字型ジナフトフルオレセインの二か所の水酸基の位置が異なる化合物を網羅的に4種類合成した。その結果全く同じ骨格を用いているにも関わらず、水酸基の位置が違うだけで、発光波長や蛍光量子収率が大きく変化することを見出した。またV字型の蛍光色素も合成した。この蛍光色素は導入する置換基の種類により、吸収・発光波長が大きく移動した。またその吸収・発光波長と導入した置換基のハメットの置換基定数との間に高い正の相関があることも見出した。②についてはキラルビナフトールの水酸基に酢酸を伸長し、その先にユーロピウムを配位させた化合物を合成し、そのCPL特性を精査した。その結果、化合物のかさ高さに起因して、ビナフトールの軸性不斉は同じ配置にもかかわらず、CPLの正負が逆転する興味深い現象を見出した。最後に③についても興味深い知見を得ており、近い将来に論文発表ができるように研究を進めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調に昨年度の研究は進展した。さらにそれらの成果をもとに、研究課題①②ともに、次の成果も出つつある状況である。研究課題③では、論文発表はまだであるが、きわめて興味深い現象を見出している。基底状態と励起状態に関する深い理解が要求される結果であり、近々に論文をまとめ発表する予定である。 ところが新型コロナウイルスのために、4月5月が全く研究ができず、6月に入ってからも、密集・密閉・密接を避けながらの研究を続けている。実験を行う人数を通常の半分で研究を続けている。学術研究においては当初予期していないことが起こることがあるが、このような一研究者の尽力では、どうにもならないので、研究のペースを落としてでも安全第一で研究を進める。
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今後の研究の推進方策 |
昨年一年は、研究の進捗もよく、このままの調子で研究を進めていく。 研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題点については、新型コロナウイルスの影響が、いつまで続くのか、いつまで半分のマンパワーで研究を行うのか、不安は尽きないが、与えられた条件で、効率よく研究を進めるしかないと覚悟している。
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