研究課題/領域番号 |
19H03356
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
林 良雄 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (10322562)
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研究分担者 |
田口 晃弘 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (40707311)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 固相ジスルフィドライゲーション / 中分子ペプチド / ペプチドー薬物架橋体 / 創薬 / ケミカルバイオロジー |
研究実績の概要 |
独自固相ジスルフィドライゲーション(固相DSL)法の化学的有用性及び創薬展開の可能性検証を継続した。1)化学的有用性検証:① ジスルフィド含有環状ペプチドの効率的合成として、これまでにジスルフィド先導型環状ペプチド合成(DSDCPS)法を確立し、さらに固相上環状ペプチド合成法も確立してきたが、本年度は、50残基程度の長鎖ジスルフィドペプチドであるアドレノメデュリンに焦点を絞り、その全合成をNative chemical ligation (NCL) と水溶性Npys-OMe誘導体との組み合わせにより達成した。オキシトシン、MHC、コノトキシンなどの固相上環状ペプチド合成については論文作成を進めた。② ジスルフィド単位を複数有する多重ジスルフィドペプチド(電車ペプチド)の合成として実施したHIV-1プロテアーゼ誘導体の合成については、合成データの収集、学術誌への投稿を行なった。2)固相DSL技術の創薬展開への可能性検証:③ 「新規架橋分子」としての抗がん剤のAPDC創製研究は余り進展はなかったが、④ PDC架橋体創製における基盤整備研究では、TJ開口活性を有するMA026に基づく創薬研究及びシクロプロパン型Negamycin誘導体の創製研究で引き続き論文作成に必要なデータ収集を実施した。一方、筋抑制因子マイオスタチンに結合し、その受容体との相互作用を阻害するマイオスタチン阻害ペプチドをこれまで開発してきたが、本年度は全てD体アミノ酸からなる16残基の阻害ペプチドの創製に成功し、論文化も完了した。加えてマイオスタチン阻害ペプチドに光酸素化触媒を架橋したPDCを創製した。当該PDCは、マイオスタチンを光照射下に選択的に酸素化・失活させることで、ナノモルレベルのIC50値を有する強力な阻害剤であることを見出し、良好な成果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
独自固相ジスルフィドライゲーション(固相DSL)法の化学的有用性の確立においては、今年度は、新規水溶性Npys誘導体を開発し、比較的大きな52残基の環状ジスルフィドペプチドの合成に成功した。本試薬は固相DSLにも適応が可能であり、固相DSLの応用範囲の拡大に役立つものである。また、昨年度成功したHIV-1プロテアーゼ誘導体の合成については論文として投稿した。DSLによりタンパク質の合成も容易にできることを示した結果であり、本成果も今後固相DSLに適応できるものと考えている。一方、マイオスタチン阻害ペプチドの開発とその酸素化触媒架橋体において、良好なマイオスタチン阻害活性が得られたことから、PDC架橋体創製においては大きく前進した。したがって、抗がん剤のAPDC創製研究は余り進捗がないものの、研究は概ね順調に進捗していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本研究課題の最終年度となる。独自創製の固相ジスルフィドライゲーション(固相DSL)の化学的有用性及び創薬展開の可能性をさらに追求し、本課題を完成させたい。1)化学的有用性検証:①ジスルフィド含有環状ペプチドの効率的合成として、これまでにジスルフィド先導型環状ペプチド合成(DSDCPS)法を確立し、さらに固相上環状ペプチド合成法も確立してきた。最終年度は、懸案となっているジスルフィド結合を3本有する複雑なペプチド医薬品であるインスリンなどのDSDCPSによる合成をさらに進め、ジスルフィド含有環状ペプチドの効率的合成法としての固相DSLの普遍性を追求したい。2)固相DSL技術の創薬展開への可能性検証:③「新規架橋分子」としての抗がん剤のAPDC創製研究では、これまでに得られた結果をまとめ、論文化を進めたい。④PDC架橋体創製における基盤整備研究では、タイトジャンクション(TJ)開口活性を有する環状デプシペプチドMA026の構造活性相関研究の論文化を進め、さらにMA026からなるPDCの開発を検討し、医薬関連化合物(Negamycin誘導体など)の経皮吸収増大に資する架橋体創製研究を進めたい。尚、遅れているシクロプロパン型Negamycin新規誘導体の論文については早急に取りまとめ投稿したい。加えて、マイオスタチン阻害ペプチドー光酸素化触媒架橋体については、医薬品としての可能性をさらに検討し、可能であれば本研究課題の成果として、創薬展開を図る活動に歩みを進めたい。
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