研究課題/領域番号 |
19H03359
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
濱瀬 健司 九州大学, 薬学研究院, 教授 (10284522)
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研究分担者 |
秋田 健行 九州大学, 薬学研究院, 助教 (50294963)
猪阪 善隆 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (00379166)
木村 友則 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 難治性疾患研究開発・支援センター, センター長 (00631300)
井手 友美 九州大学, 医学研究院, 准教授 (90380625)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 分析化学 / 光学分割 / 多次元HPLC / 定量メタボロミクス / アミノ酸 |
研究実績の概要 |
本研究では腎不全・心不全の新規低侵襲早期診断法として、血中および尿中のキラルメタボロームプロファイリングを利用した方法を開発する。全研究期間の前半では分析対象を絞って臨床検体を分析できる三次元LC/LC/LC装置を開発する。研究後半では分析対象を全タンパク質構成アミノ酸に拡大すると共に、各種ヒドロキシ酸・ペプチドもターゲットに加える。また、各種腎不全・心不全モデル動物を作出し、キラルプロファイリングによる原因疾患の鑑別を行い、含量変化の生理的意義を解析する。併せてヒト臨床検体のキラルアミノ酸・ヒドロキシ酸含量解析を行い、予後予測、治療効果との相関解析を実施し、低侵襲診断法の構築につなげる。
2019年度は腎不全・心不全の早期診断、低侵襲での原因疾患特定を行うため、予備検討で顕著な含量変化を示した親水性アミノ酸、乳酸、3HBに焦点を絞り、「三次元LC/LC/LC分析システム」を開発した。親水性アミノ酸では腎機能を反映する有用マーカーとしてアスパラギン、セリン、アラニン、プロリンを選択し、逆相カラム、陰イオン交換カラム、光学分割カラムを組み合わせた三次元システムを構築した。また、本システムを補完する迅速二次元HPLCシステムが必要であると考え、血中セリン鏡像異性体を対象として年間10万検体の分析を可能とするハイスループットシステム構築を行った。ヒドロキシ酸については、逆相カラム、ミックスモードカラム、光学分割カラムを組み合わせた三次元システムを構築した。
また、2020から2021年度にかけて予定している様々な腎・心不全モデルマウスによるキラルメタボロームプロファイリング、ヒト検体のプロファイリングを行う準備として、大阪大学医学部腎臓内科、九州大学医学部循環器内科と共同で腎不全、心不全モデル動物の作製とヒト検体の収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
親水性アミノ酸の三次元HPLC分析システムとして腎機能の有用なマーカーであるアスパラギン、セリン、アラニン、プロリン分析システムの構築を達成している。また、本システムを補完する迅速二次元HPLCシステムとして血中セリン鏡像異性体のハイスループットシステム構築にも成功した。ヒドロキシ酸については、乳酸、3-ヒドロキシ酪酸鏡像異性体をターゲットとする三次元システム構築を達成している。各種モデル動物の作出、ヒト検体の収集も進んでいる。以上より本研究は概ね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は分析対象に哺乳類体内でD体の存在が認められる各種アミノ酸を加えると共に、乳酸、3HB以外の各種ヒドロキシ酸もターゲットに加える。なお、各次元に利用する固定相は理論段の更なる向上を実現することで高性能化を図る。また、原因疾患の異なる腎不全・心不全モデル動物を作出し、キラルプロファイリングによる原因疾患の鑑別を試みると共に、含量変化の生理的意義を解析する。
キラルメタボローム三次元HPLC分析装置の開発に関しては、これまで多次元化が困難であった酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸、疎水性アミノ酸をターゲットとする三次元HPLC分析システムを開発する。分析法は一次元目の逆相、三次元目のキラル分割に加えて二次元目に陰イオン交換またはミックスモード分離を有する三次元LC/LC/LC装置とする。一次元目、二次元目、三次元目ともに固定相は全て自作し、各次元の保持力を制御することで移動相適合性の問題を解決し、定量性、選択性、理論段数の向上を図る。
また、確実に原因疾患を特定できる腎・心不全試料として、様々なモデルマウスを作製し、キラルメタボロームのプロファイリングを行う。腎不全モデルとしては、腎臓部分摘出による腎機能低下モデル、糸球体腎炎モデル、糖尿病性腎症モデルなどを選択し、疾患動物の作製と腎機能の評価を行う。心不全モデルとしては心筋梗塞モデル、拡張型心筋症モデル、圧負荷モデルなどを選択し、疾患動物の作製と心機能の評価を行う。また、上記で開発する三次元LC/LC/LC分析装置を用いてこれらの動物におけるキラルアミノ酸およびキラルヒドロキシ酸のプロファイリングを行い、疾患との関連を解析する。
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