研究実績の概要 |
1. 分岐糖鎖のNMR解析法の検討 3本~4本の多分岐型糖鎖の場合、NMRシグナルの縮重が起こり、各分枝の議論が困難になる。シグナルの縮重を回避するため、広域ホモデカップリング(Pureshift)やスペクトル処理を工夫することにより、NMRスペクトルの簡素化の方法を検討した。広域ホモデカップリング法では通常の測定に比べて感度が低下するものの、1H同士のカップリングによる分裂を回避することができたため、従来であればシグナルの重なりや、分裂の複雑さから読み取ることができなかった異核(13Cや31P)とのカップリング定数を容易に読み取ることができた。実際13C標識を部位特異的に行った糖鎖試料に対して、Purshift NMRスペクトルを測定することにより、糖残基間のグリコシド結合周りの3J(C,H)カップリング定数を比較的容易に読み取ることができた。また1H-13C HSQC CLIP-COSYのrelayを繰り返すことにより、アノマー位の水素H1からH2, H3, H4と順にあいまいさなく帰属することができた。本測定方法は感度も良好であり、シグナルの重なりの激しい糖鎖信号の帰属に非常に有効な方法であった。 2. 高マンノース型糖鎖含有タンパク質の大量調製法の検討 分岐型糖鎖を結合しているモデル糖タンパク質としてRNase Bを主な対象とした。RNase Bは高マンノース型糖鎖を有しているが、マンノース残基が5個から9個の混合物であり、各RNase BグライコフォームをHPLCにより単離精製する方法を検討した。カラムの種類、移動相の溶媒の種類、グラジエントを検討することにより、各RNaseBグライコフォームを単離することに成功した。各グライコフォームはNMR解析や糖転移酵素との相互作用解析に供する予定である。
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