研究課題
1. 13C-NMR法による糖タンパク質の水素結合の解析水素結合を直接観察する一つの手段としてNMR法が用いられている。1H-NMR法は糖鎖ヒドロキシ水素を直接観測する利点を有する一方で、シグナルの化学シフト範囲が狭く、他の信号と重複することが問題であった。本研究ではその問題を解決するため、広い化学シフト域を有する13C-NMRを用いて解析を行った。13C-NMR測定には分岐型高マンノース糖鎖を含むRNase Bをモデル糖タンパク質として、H2O : D2O = 1 : 1の溶媒を使用して行った。そして、糖鎖に由来する13C-NMRシグナルの線形の温度依存性を観察することにより、ヒドロキシプロトンのH/D交換速度に関する情報の抽出を試みた。その結果、高温ではsharpな13Cシグナルが観測された一方、低温においてはbroadな13Cシグナルが観察された。13C-NMRの感度の低さの問題は残されているものの、糖タンパク質糖鎖の水酸基に由来する水素結合の解析法として13C-NMR法の有効性を示した。2. 分岐糖鎖を有するタンパク質と糖転移酵素との相互作用解析分岐型糖鎖に作用する糖転移酵素UGGTの分子メカニズムを解明するため、糖転移酵素およびその補助因子の発現系構築を最初に検討した。細胞内に発現している糖転移酵素の抽出条件の最適化(超音波破砕の時間、可溶化剤の添加)を行い、糖転移酵素の一段階精製法を確立した。また補助因子の分泌発現・精製法を確立し、補助因子内のジスルフィド結合ペアを2組同定した。さらに、精製した糖転移酵素と補助因子を混合後、ゲルろ過カラムを用いて安定な複合体を単離することに成功した。その複合体をネガティブ染色後に2D解析を行ったところ、クライオ電顕で観察が見込める単分散の像を得ることができた。
2: おおむね順調に進展している
試薬の到着の遅れ・故障機器の修理の遅れなどはあったが、おおむね当初の計画目標を達成している。
計算科学の基盤を整えるとともに、電子顕微鏡観察のための高濃度タンパク質試料を調製する。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 5件、 査読あり 13件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 2件、 招待講演 5件)
International Journal of Molecular Sciences
巻: 21 ページ: 437~437
10.3390/ijms21020437
Journal of Thrombosis and Haemostasis
巻: 18 ページ: 1357~1369
10.1111/jth.14789
Scientific Reports
巻: 10 ページ: 8647
10.1038/s41598-020-64887-4
Journal of Biological Chemistry
巻: 295 ページ: 5257~5277
10.1074/jbc.RA119.012502
巻: 22 ページ: 349~349
10.3390/ijms22010349
Nature Chemical Biology
巻: 16 ページ: 756~765
10.1038/s41589-020-0516-y
Curr Top Microbiol Immunol
巻: 429 ページ: 147~176
10.1007/82_2019_181
Glycobiology
巻: 30 ページ: 214~225
10.1093/glycob/cwz068
The Journal of Organic Chemistry
巻: 85 ページ: 16115~16127
10.1021/acs.joc.0c01939
Journal of Synthetic Organic Chemistry, Japan
巻: 78 ページ: 485~494
10.5059/yukigoseikyokaishi.78.485
Trends in Glycoscience and Glycotechnology
巻: 32 ページ: E113~E118
10.4052/tigg.1616.1E
Chemical Physics Letters
巻: 749 ページ: 137455~137455
10.1016/j.cplett.2020.137455
生化学
巻: 92 ページ: 369~377
10.14952/SEIKAGAKU.2020.920369