1. NMR法および計算化学を融合した抗体のリガンド複合体の結合様式の解明 タンパク質の立体構造モデリングの分野が機械学習により著しく進展した状況において、タンパク質とリガンドの結合様式を精度高くかつ迅速に明らかにすることは喫緊の課題として残っている。本年度は、NMR法と計算化学的手法を融合することにより、タンパク質とリガンドの複合体モデルを迅速かつ高精度で構築することを目標とした。立体構造情報の蓄積している抗体分子を対象とし、分岐構造を有するリガンドとの相互作用様式の解明に取り組んだ。1H-NMRによる滴定実験およびSTD-NMRから、エピトープ領域を推定した。ホモロジーモデリングおよびアルファフォールドにより抗体モデルを構築し、実験情報を含めたドッキングシミュレーションを実施してドッキングポーズを得た。立体構造既知の抗体-リガンド複合体の系に対して同様の手法でドッキングを行い、本方法の精度を定量的に評価した。 2. 分岐糖鎖を有するタンパク質と糖転移酵素の相互作用解析 高濃度で調製した糖転移酵素と補助因子の複合体の2D解析を再度行い、クライオ電顕観察のための予備検討を行った。また、糖転移酵素と基質との複合体を電顕で観察のための基質の精製法を樹立した。さらに、糖転移酵素と補助因子の複合体に合成基質候補を混合させた試料についても電顕像での観察を行った。準備が整い次第、基質上の分岐糖鎖と糖転移酵素の相互作用様式および補助因子の役割をクライオ電顕像の解析から明らかにする。
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