研究課題/領域番号 |
19H03363
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
本田 真也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 副研究部門長 (50344122)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | タンパク質 / 凝集 / バイオ医薬品 / モノクローナル抗体 |
研究実績の概要 |
本研究は、物理化学ストレスが誘発する治療用モノクローナル抗体の凝集化のメカニズム解明と予測理論構築を目的とし、(A)酸ストレスが誘発する劣化抗体の局所的構造変化の部位の特定、(B)酸ストレスが誘発する劣化抗体のドメインの空間的変位の定量、(C)劣化抗体が形成するマイクロメータ・スケールの凝集体のフラクタル性の判定、(D)異なる物理化学ストレス・異なる可変領域アミノ酸配列の依存性の評価、の4項目を実施する。2019年度はこのうちの「(C)劣化抗体が形成するマイクロメータ・スケールの凝集体のフラクタル性を判定」を行った。これまで申請者は、劣化抗体の凝集反応の速度論解析をDLS法を用いて行い、100 nm以下のナノメータ・スケールの凝集化において二つの緩和過程が存在し、遅い過程はコロイド科学の基本理論であるスモルコフスキー式で記述できることを明らかにしている。そこで、2019年度は、まず、100-1000 nmのマイクロメータ・スケールの凝集体の発生過程をSE-ADM法を利用して測定した。次いで、SE-ADM法で得られた画像をボックスカウント法で解析したところ、フラクタル性が存在することが確認された。算出されたフラクタル次元の値は、過去に申請者がDLS法を用いて求めた値と同程度であった。この結果は、マイクロメータ・スケールの凝集体の発生メカニズムはナノメータ・スケールの凝集体の発生メカニズムと同質であることを示唆している。即ち、ナノメータからマイクロメータまでの広範なスケールの現象がスモルコフスキー式を適用・拡張することで統一的に記述できる可能性があることが示された。また、「(A)酸ストレスが誘発する劣化抗体の局所的構造変化の部位の特定」と「(B)酸ストレスが誘発する劣化抗体のドメインの空間的変位の定量」に関して、実験系の構築と予備的な検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度に予定していた、「(C)劣化抗体が形成するマイクロメータ・スケールの凝集体のフラクタル性を判定」の項目はほぼ計画通り年度内に達成した。一方、「(A)酸ストレスが誘発する劣化抗体の局所的構造変化の部位の特定」と「(B)酸ストレスが誘発する劣化抗体のドメインの空間的変位の定量」の2項目のための実験系の構築と予備的な検討に関しては、計画時に想定していた博士研究員の雇用が不調に終わったため実施できなかった。これらについては、繰越制度を活用して2020年度に実施した。
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今後の研究の推進方策 |
繰越制度を活用して2019年度の未達部分を2020年度に繰り延べたが、全期としては当初計画の完遂を目指す。具体的には、「(A)酸ストレスが誘発する劣化抗体の局所的構造変化の部位の特定」と「(B)酸ストレスが誘発する劣化抗体のドメインの空間的変位の定量」を2020年度内に完了し、「(D)異なる物理化学ストレス・異なる可変領域アミノ酸配列の依存性の評価」を2021年度に実施する。
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