研究課題
本研究は、物理化学ストレスが誘発する治療用モノクローナル抗体の凝集化のメカニズム解明と予測理論構築を目的とし、(A)酸ストレスが誘発する劣化抗体の局所的構造変化の部位の特定、(B)酸ストレスが誘発する劣化抗体のドメインの空間的変位の定量、(C)劣化抗体が形成するマイクロメータ・スケールの凝集体のフラクタル性の判定、(D)異なる物理化学ストレス・異なる可変領域アミノ酸配列の依存性の評価、の4項目を実施する。2021年度はこのうちの「(D)異なる物理化学ストレス・異なる可変領域アミノ酸配列の依存性の評価」を行った。酸ストレスおよび加温ストレスが誘発する劣化抗体を対象に、また、可変領域配列が異なる4種類の抗体を対象に、それぞれの凝集性を評価した。凝集性の評価は、DLS法、SEC法、CD法、AUC法およびSE-ADM法で行った。これら測定を系統的かつ経時的に進め、蓄積したデータの比較解析から、各々の凝集化反応の共通性と特殊性を考察し、申請者が以前に確立した理論モデル(J Phys Chem B 2016)の適用を試みた。その結果、凝集反応の進行に伴い、凝集性の分子種が凝集性の低下あるいは不活性化した分子種へ転換すると仮定することで、観測値を確度よく再現できることが明らかとなった。この仮定を取り入れた拡張理論モデルは、低温から高温までの広い温度範囲の凝集反応を表現できる。なお、凝集化に抗する分子種の実体については現時点で不明であるが、部分的に天然様の立体構造が復元している可能性がある。以上の知見は、抗体医薬品を長期に保管する際に発生する微量の凝集体の抗体初期濃度依存性、保管期間依存性、および保管温度依存性を予見するあらたな理論の構築を促すものである。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 5件)
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