本研究は、物理化学ストレスが誘発する治療用抗体の凝集化メカニズムの解明と凝集化予測理論の構築を目的とした。その結果、酸ストレスが誘発する劣化抗体の局所的構造変化部位の特定に成功し、C末端のわずかなコンホメーション変化に伴う疎水性コアの露出が構造劣化抗体の共通のサインであることを明らかにした。また、劣化抗体のドメインの空間的変位を定量し、pH 2ではCH3ドメインのホモ二量体は解離して天然様の四次構造が崩れた状態となることを明らかにした。さらに、劣化抗体が形成するマイクロメータ・スケールの凝集体の無乾燥無染色計測を行い、ナノメータ・スケール凝集体と同次元のフラクタル性が存在することを確認した。
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