研究課題
本研究は、新たに同定した自然免疫受容体であるGyc76Cによる液性免疫応答(NF-κB経路の調節)と、細胞性免疫応答(血球細胞の増殖誘導)の制御機構を明らかにすることを目的にしている。本年度は、Gyc76Cによる細胞性応答制御機構の解明に注力した。まず、Gyc76Cによる液性応答の制御に必要なGyc76Cのグアニル酸シクラーゼ活性とGyc76CによるcGMP産生が、細胞性応答に必要かどうか調べた。その結果、両者共に細胞性応答の制御には必要でないことが明らかとなり、Gyc76Cが液性応答とは異なり、cGMP非依存に細胞性応答を制御している事が示唆された。さらに、Gyc76Cによる液性応答の制御に必要なcGMP依存性キナーゼDG2、NF-κB経路のアダプター因子dMyD88が、Gyc76Cによる細胞性制御には必要ないことが明らかとなり、Gyc76Cが液性免疫応答と細胞性免疫応答を異なる経路で制御していることが明確となった。これまで、Gyc76Cによる細胞性応答制御への低分子量Gタンパク質Ras85Dの関与を示唆している。そこで、Ras85D変異体を用いて、Gyc76Cによる細胞性応答と液性応答を調べた。その結果、Ras85DがGyc76Cによる細胞性応答にのみに必要とされることが明らかとなった。さらに、Ras85D変異体を用いた感染実験により、Ras85に依存した経路の、感染抵抗性の発現における重要性が明らかとなった。加えて、Ras85DとGyc76Cの細胞内ドメインとの物理的な相互作用を免疫沈降法により調べたところ、細胞性応答に必要なGyc76Cのキナーゼ様部位に依存して、両者が物理的相互作用を示すことが明らかとなった。これらにより、同一の受容体により異なる免疫応答が協調的に制御される機構の一端が明らかとなった。以上の研究内容は論文発表を行った。
1: 当初の計画以上に進展している
新たに同定した自然免疫受容体Gyc76Cが、異なる経路を介して液性免疫応答と細胞性免疫応答を制御していることが明確となり、同一の受容体により異なる免疫応答が協調的に制御される機構の一端が明らかとなったため。
本研究では、研究項目(1)Gyc76Cリガンドの同定と、Gyc76CとToll受容体の活性化によるNF-κB経路の調節、研究項目(2)Gyc76Cによる細胞性免疫応答誘導機構の解明、を推進するが、初年度において研究項目(2)Gyc76Cによる細胞性免疫応答誘導機構の解明が、当初の計画以上に進展したため、今後は、研究項目(1)Gyc76Cリガンドの同定と、Gyc76CとToll受容体の活性化によるNF-κB経路の調節機構の解明に注力する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
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http://www.pharm.tohoku.ac.jp/~seimei/seimei_original.html