本研究は、新たに同定した自然免疫受容体であるGyc76Cによる液性免疫応答(NF-κB経路の調節)と、細胞性免疫応答(血球細胞の増殖誘導)の制御機構を明らかにすることを目的にしている。そのために、研究項目(1)Gyc76Cリガンドの同定と、Gyc76CとToll受容体の活性化によるNF-κB経路の調節機構の解明、そして研究項目(2)Gyc76Cによる細胞性免疫応答誘導機構の解明、を推進している。初年度において、研究項目(2)Gyc76Cによる細胞性免疫応答誘導機構の解明、に注力して当初の研究計画のほぼ全てを達成した。そのため昨年度からは、研究項目(1)Gyc76Cリガンドの同定と、Gyc76CとToll受容体の活性化によるNF-κB経路の調節機構の解明、に焦点を当て研究を進めている。これまでの解析により、多様なアイソフォームを示すSpz前駆体から生じるN末端断片がGyc76Cの活性化に関わり、その機能がアイソフォームで異なっている可能性が示唆されている。そこで今年度は、これまでの遺伝学的解析に加えて、生化学的な解析を行った。DL1細胞を用いて、ModSPを活性化した幼虫体液中に、Gyc76C依存にDrosomycinの発現を誘導する活性、すなわちGyc76Cリガンド活性を検出している。そこで、この活性を指標にGyc76Cのリガンドを試みた。活性成分は酸抽出でき、熱耐性で、分子量が10kDaより大きいことが明らかとなった。さらに、陰イオン交換カラム、逆相カラムを用いたHPLCにより精製を進め、質量分析により候補タンパク質を同定した。
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