研究実績の概要 |
我々は最近、リゾホスファチジルセリン脂質を認識するGPCRとしてリゾホスファチジルセリン(LysoPS)の受容体を同定した。同定したLysoPS受容体(LPS2, LPS2L)はともにB細胞に高発現し、特に、胚中心B細胞の前駆細胞に発現していた。また、G12/13と強く共役した。LysoPS受容体のKOマウスは抗原免疫後胚中心B細胞と前駆細胞の数が優位に高く、LysoPSがLysoPS受容体を通じ、B細胞の増殖を負に制御していることがわかった。また、同マウスではCD4 T細胞の数も少ないことが判明した。興味深いことに、免疫後のリンパ節ではLysoPSが顕著に上昇していた。以上のことから、LysoPSは免疫抑制性の当たらな脂質メディエーターであることが判明した。しかし、LysoPSの産生系は不明であり、本研究で解析している。 令和元年度、B細胞がLysoPSを産生することを見出した。LPS2, LPS2LのダブルKOマウスでは免疫後のリンパ節内ではLysoPSの産生が亢進することがLC-MS/MSで解析よりわかった。また、質量顕微鏡技術を用い、リンパ節内のLysoPS産生部位を調べると、LysoPSの分布はB細胞の分布とほぼ一致した。そこで、免疫後のリンパ節からB細胞を単離し、LC-MS/MSでLysoPSを解析すると、免疫刺激後のB細胞はLysoPSを多く含んでいた。また、in vitroのLPS2, LPS2L受容体活性化アッセイにおいて、単離したB細胞は強いLPS2, LPS2L受容体活性化能を示した。以上のことから、LysoPSはB細胞のオートクライン因子であり、また、活性化B細胞自身にLysoPSを産生する機構があることがわかった。今後、活性化B細胞をモデルとして、産生酵素の同定を行う予定である。
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