研究実績の概要 |
本年度はNMDA受容体のN型糖鎖についての解析を行った。NMDA受容体は主にGluN1、GluN2A、GluN2Bと呼ばれるサブユニットの四量体から形成される。中でもGluN1は全てのNMDA受容体に含まれる必須のサブユニットである。GluN1は分子内に多くの糖鎖付加部位が存在するにも関わらず、細胞表面への輸送後も、その全てがhigh-mannose型糖鎖であることがわかっている。そこで、GluN1上の糖鎖が全てhigh-mannose型糖鎖に維持されるために必要な領域の解析を行った。具体的には、細胞内トラフィッキングに最も影響を与えると考えられるGluN1のC末端領域をGluA2のC末端領域と置き換えて解析したところ、GluN1のC末端領域を持つGluA2は細胞表面上でhigh-mannose型糖鎖を有することが明らかになった。さらにGluN1のC末端領域に存在する3つのドメイン(C0, C1, C2)のどの場所が最も重要であるかを解析した。その結果、C1領域にhigh-mannose型糖鎖維持に必須の領域が存在することが明らかとなった。 前年度までのAMPA受容体のN型糖鎖付加部位の変異体を用いた解析により、GluA1のN63位のN型糖鎖がGluA1の小胞体から膜表面への輸送に必須であると考えられた。しかし、膜表面に発現しない糖鎖欠損変異体を用いた解析では、その部位に付加されている糖鎖本来の機能的役割を解析することが難しい。そこで、GluA1の膜表面発現に必須であるN63位の糖鎖付加部位をGluA2に組み込むことにより、GluA1N63位上N型糖鎖の機能的意義の解析を行った。その結果、GluA1のN63位の糖鎖付加部位を持つGluA2-N63はGluA2の野生型に比べ膜表面発現量が増強されることが明らかとなった。
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