• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2019 年度 実績報告書

新規脂質メディエーター、プラズマローゲン型リゾリン脂質の分子機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19H03372
研究機関徳島大学

研究代表者

山本 圭  徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 准教授 (30304504)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードリゾリン脂質 / 乾癬 / 皮膚バリア
研究実績の概要

表皮は、体内の生命環境と非生命環境との間の境界バリアの役目を持ち体内からの水分の蒸発、体液の漏出あるいは病原体などの侵入から体を守っている。しかし、その代謝系の破綻は多岐に渡る皮膚疾患と関連する。代表者はこれまでに、リン脂質代謝酵素ホスホリパーゼA2(PLA2G2F)により産生されるプラズマローゲン型リゾリン脂質(P-LPE)が表皮肥厚性疾患を制御する新規リゾリン脂質であることを同定した。しかしこのP-LPEが作動する分子機構および作用機序については充分に理解されていない。本研究ではこれまでの研究を継続発展させP-LPEを基軸とした表皮肥厚性疾患の新たな制御機構が明らかにすることを目的としている。本年度は以下の項目について明らかにした。
1)ヒト尋常性乾癬モデルのK5-Stat3C-Tgでは対照と比較してsPLA2-IIFおよびP-LPE経路の増加が認められ、このモデルにおいてもPLA2G2F/P-LPE経路を持つことが示唆された。
2)表皮角化細胞株NHEK/SVTERT3-5を用いて乾癬を反映する三次元in vitroモデルを作成した。このモデルでは細胞の三次元化に伴い炎症が惹起されるが、sPLA2-IIFのノックダウンにより細胞の三次元化と炎症が緩和された。さらに、この状態にP-LPEを添加すると表現型が回復した。
3)上記のin vitro系を用いて候補となる受容体の絞り込みをおこない、受容体欠損マウスを作成した。
4)尋常性乾癬の患者の角質からヒトにもPLA2G2F/P-LPE経路が存在することが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は以下のように研究課題を実施し、概ね順調に進展している。
1)ヒト尋常性乾癬モデルのK5-Stat3C-Tgでは対照と比較してsPLA2-IIFおよびP-LPE経路の増加が認められ、このモデルにおいてもPLA2G2F/P-LPE経路を持つことが示唆された。
2)乾癬を反映する三次元in vitroモデルを作成した。このモデルでは細胞の三次元化に伴い炎症が惹起されるが、sPLA2-IIFのノックダウンにより細胞の三次元化と炎症が緩和された。さらに、この状態にP-LPEを添加すると表現型が回復した。
3)上記のin vitro系を用いて候補となる受容体の絞り込みをおこない、受容体欠損マウスを作成した。
4)尋常性乾癬の患者の角質からヒトにもPLA2G2F/P-LPE経路が存在することが明らかとなった。

今後の研究の推進方策

本研究の目的を達成するために以下の研究計画を遂行する。
1)尋常性乾癬モデルを用いたPLA2G2F/P-LPE経路の解明。昨年度はヒト尋常性乾癬モデルのK5-Stat3C-TgにおけるPLA2G2F/P-LPE経路を明らかにし、これを基軸とする治療効果を示すことができた。本年度は論文化を見据えて細かなデーターを揃える予定である。
2)in vitroにおけるプラズマローゲン型リゾリン脂質代謝経路の分子機構の解明。昨年度は表皮角化初代培養細胞系を構築しP-LPEが慢性皮膚炎症疾患に寄与することを明らかにした。本年度はP-LPE代謝物が皮膚バリア構築に寄与することを明らかにする。
3)プラズマローゲン型リゾリン脂質の作用点を同定と生物学的意義の解明。昨年度は上記のin vitro系を用いて候補となる受容体を絞り込み受容体欠損マウスを作成した。本年度は受容体欠損マウスを維持し、年度後半に慢性皮膚炎症疾患への寄与を明らかにしていく。
4)ヒト臨床検体を用いた皮膚疾患とプラズマローゲン型リゾリン脂質の相関性の検証。昨年度は尋常性乾癬の患者の角質を用いてヒトにもPLA2G2F/P-LPE経路が存在することを明らかにした。本年度も引続き検体を50症例程まで集め相関性を確実にする。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2019 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [国際共同研究] CNRS(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      CNRS
  • [雑誌論文] Group IID, IIE, IIF and III secreted phospholipase A2s2019

    • 著者名/発表者名
      Murakami M, Miki Y, Sato H, Murase R, Taketomi Y, Yamamoto K.
    • 雑誌名

      Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Molecular and Cell Biology of Lipids

      巻: 1864 ページ: 803~818

    • DOI

      10.1016/j.bbalip.2018.08.014

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Parkinson’s disease-associated iPLA2-VIA/PLA2G6 regulates neuronal functions and α-synuclein stability through membrane remodeling2019

    • 著者名/発表者名
      Mori A, Hatano T, Inoshita T, Shiba-Fukushima K, Koinuma T, Meng H, Kubo S, Spratt S, Cui C, Yamashita C, Miki Y, Yamamoto K, Hirabayashi T, Murakami M, Takahashi Y, Shindou H, Nonaka T, Hasegawa M, Okuzumi A, Imai Y, Hattori N.
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences

      巻: 116 ページ: 20689~20699

    • DOI

      10.1073/pnas.1902958116

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Intracellular Ca2+-dependent formation of N-acyl-phosphatidylethanolamines by human cytosolic phospholipase A2ε2019

    • 著者名/発表者名
      Binte MSS, Uyama T, Morito K, Takahashi N, Kawai K, Hussain Z, Tsuboi K, Araki N, Yamamoto K, Tanaka T, Ueda N.
    • 雑誌名

      Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Molecular and Cell Biology of Lipids

      巻: 1864 ページ: 158515~158515

    • DOI

      10.1016/j.bbalip.2019.158515

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Enzymatic Synthesis of 1‐Alkyl‐2‐hydroxy‐ sn‐glycero‐2,3‐cyclic‐phosphate Using a Novel Lysoplasmalogen‐Specific Phopholipase D2019

    • 著者名/発表者名
      Sakasegawa S, Taira S, Yamamoto K, Sugimori D.
    • 雑誌名

      European Journal of Lipid Science and Technology

      巻: 122 ページ: 1900227~1900227

    • DOI

      10.1002/ejlt.201900227

    • 査読あり
  • [学会発表] Group IIF phospholipase A2/lysophosplasmalogen axis is a novel drug target for epidermal-hyperplastic diseases.2019

    • 著者名/発表者名
      Yamamoto, K., Hakoi, H., Miki, Y., and Murakami, M.
    • 学会等名
      60th International Conference on the Bioscience of Lipids.
    • 国際学会
  • [学会発表] The roles of lysoplasmalogen in three-dimensional keratinocyte culture system.2019

    • 著者名/発表者名
      Hakoi, H. and Yamamoto, K.
    • 学会等名
      60th International Conference on the Bioscience of Lipids.
    • 国際学会
  • [学会発表] IIF型分泌性ホスホリパーゼA2/リゾプラズマローゲン経路は表皮肥厚性疾患の新規創薬ターゲットである.2019

    • 著者名/発表者名
      山本圭,箱井春香,三木寿美,村上誠.
    • 学会等名
      第61回日本脂質生化学会.
  • [学会発表] 脂質メタボローム解析が紐解く新しい脂質代謝2019

    • 著者名/発表者名
      山本圭
    • 学会等名
      第4回メタボローム解析シンポジウム
  • [学会発表] 新規脂質メディエーター、プラズマローゲン型リゾリン脂質の分子機能.2019

    • 著者名/発表者名
      山本圭.
    • 学会等名
      第92回日本生化学会
    • 招待講演
  • [学会発表] 皮膚三次元培養システムを用いたリゾプラズマローゲンの機能の解明.2019

    • 著者名/発表者名
      箱井春香,山本圭.
    • 学会等名
      第92回日本生化学会

URL: 

公開日: 2021-01-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi