研究課題/領域番号 |
19H03373
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
五十里 彰 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (50315850)
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研究分担者 |
浅井 知浩 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (00381731)
横山 英志 東京理科大学, 薬学部生命創薬科学科, 准教授 (70433208)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | クローディン / 肺がん / 短鎖ペプチド |
研究実績の概要 |
肺がん細胞で異常発現するクローディン(CLDN)の病態生理的役割を解明し、CLDNを標的とした新たな抗がん剤の開発に向け、下記の研究を実施した。 (1) 肺扁平上皮がんにおけるCLDN1・11の病態生理機能の解明 ヒト正常肺組織および扁平上皮がん組織から調製したcDNAを用いて、扁平上皮がん組織にCLDN1・11が高発現することを見出した。トランスウェルアッセにより、CLDN1・11は低分子に対する細胞間バリアを形成することが明らかになった。親細胞とCLDN1・11ノックダウン細胞を低吸着プレートで三次元培養し、in vitro 微小環境(スフェロイド)で抗がん剤感受性を調査した。CLDN1・11ノックダウンによりスフェロイドの低酸素度が軽減し、抗がん剤の感受性が亢進した。さらに、フラボノイドのクリシンは、CLDN1・11の発現を低下させ、抗がん剤感受性を亢進した。水晶振動子マイクロバランス解析において、クリシンはAktに結合することが実証された。 (2) 肺腺がん細胞の微小環境のストレス形成に対するCLDN2の影響 これまでに我々は肺腺がん細胞にCLDN2が高発現し、細胞増殖の亢進作用を有することを報告した。しかし、CLDN2の他の病態生理機能は不明である。CLDN2のノックダウンによりスフェロイドの低酸素ストレスが軽減することを見出した。CLDN2の細胞外ループに結合する短鎖ペプチドを探索し、CLDN2の発現低下作用を有する2種類のペプチドを同定した。これらの短鎖ペプチドは、ドッキングシミュレーションでCLDN2の細胞外ループに結合することが確認された。スフェロイドを短鎖ペプチドで処理したところ、既存抗がん剤の感受性が亢進した。CLDN2を標的とした薬剤は、肺腺がんに対する新たな補助療法薬になることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
肺腺がんに対する新たな治療薬として、CLDN2を標的とした短鎖ペプチドの開発に成功したが、その効果は部分的であり、さらに強い効果を有する薬剤の開発が必要である。また、日々の食事によってがん悪性化を予防するため、CLDNの異常発現を改善する食品成分の同定が必要である。
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