研究課題
肺がん細胞に高発現するクローディン（CLDN）について、その病態生理機能の解析と発現低下作用をもつ食品成分の探索を行った。(1) 肺腺がん細胞におけるCLDN2の発現低下作用を有する食品成分の探索これまでに我々は肺腺がん細胞におけるCLDN2の発現を低下させることにより、抗がん剤感受性が亢進することを解明した。しかし、CLDN2の発現低下作用を有する食品成分はほとんど明らかになっていない。今回、野菜に広く含まれるケンフェロールの効果を検討したところ、濃度依存的にCLDN2の発現を低下させ、抗がん剤感受性を亢進させることを解明した。ケンフェロールを含有する食品を積極的に摂取することにより、がん悪性化の予防に繋がることが期待される。(2) 肺腺がん細胞の微小環境のストレス形成に対するCLDN1の影響これまでに我々は肺腺がん細胞におけるCLDN2の異常発現機構と病態生理的役割を解明したが、抗がん剤感受性の改善作用は不十分であった。そこで、他のCLDNの関与としてCLDN1の効果を検討した。CLDN1のノックダウンによりスフェロイドの低酸素ストレスが軽減することを見出した。さらに、CLDN1の細胞外ループに結合する短鎖ペプチドを探索し、CLDN1の発現低下作用を有する短鎖ペプチドを同定した。この短鎖ペプチドは、ドッキングシミュレーションおよび水晶振動子マイクロバランス解析法でCLDN1の細胞外ループに結合することが確認された。スフェロイドを短鎖ペプチドで処理したところ、既存抗がん剤の感受性が亢進した。CLDN1を標的とした薬剤は、肺腺がんに対する新たな補助療法薬になることが期待される。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通りに進行しているが、一部追加の研究が必要になったため。
肺がんにおけるCLDN1やCLDN2の発現に対し、低下作用をもつ食品成分や短鎖ペプチドの開発に成功したが、低中分子化合物は未開発である。今後、CLDNへの選択的結合と発現低下作用をもつ低中分子化合物を探索する。
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International Journal of Molecular Sciences
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https://www.gifu-pu.ac.jp/lab/seika/
