研究課題
本研究では、重金属の毒性発現の標的として脂質分子に注目し、重金属等の毒性化学物質曝露に伴う脂質組成の変化及び生理活性脂質の産生を網羅的に解析するトキシコリピドミクスの手法を用い、重金属の組織特異的毒性発現機構を明らかにすることを目的としている。本年度は以下の点を明らかにした。1) 神経毒性を示すメチル水銀に関する解析:多様な過酸化脂質を同定する系の構築を中心に、メチル水銀投与後のマウス脳におけるトキシコリピドミクスを引き続き進めた。2) 腎毒性を示す重金属に関する解析:カドミウム、亜ヒ酸、いずれの曝露によっても、ヒト腎近位尿細管細胞HK2における活性酸素産生は上昇したが、長鎖アシルCoA合成酵素ACSL4をノックダウンし高度不飽和脂肪酸含有リン脂質を減少させても、両重金属に対する感受性に変化はみられなかった。また、プログラム細胞死の各種阻害剤で前処理したところ、カドミウムによる細胞死はいずれの阻害剤の影響もみられなかったが、亜ヒ酸による細胞死は、アポトーシスやフェロトーシスの阻害剤により一部抑えられた。3) 膀胱毒性・肺毒性を示す化学物質に関する解析:重金属による組織特異的毒性発現機構の解析へ応用するために、膀胱及び肺に特異的に毒性を示すシクロホスファミドとパラコートを用いた解析を引き続き進め、両毒性発現には異なる脂質代謝経路が関わるものの、いずれにおいても障害部位への好中球の浸潤が深く関わることが明らかになった。4) 精巣や脳に特異的に発現する長鎖アシルCoA合成酵素ACSL6の基質特異性の解析:精巣や脳において高発現し、各組織におけるリン脂質組成の制御を介し、組織特異的毒性発現に関与すると予想されるACSL6の基質特異性について解析した。その結果、ACSL6分子種のうち、ACSL6V1がリノレン酸を良い基質にするのに対し、精巣や脳に高発現するACSL6V2はドコサヘキサエン酸を良い基質とすることが見出された。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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