研究課題
杉浦が独自の創薬探索手法により発見したERK MAPKシグナル調節剤である<ACA-28>は、ERK活性依存的細胞死を、がん細胞選択的に誘導することにより、抗腫瘍効果を発揮する。本研究の目的は「ACA-28は、いかなる分子を標的として、ERK MAPKを活性化するのか?」「ACA-28を介するがん細胞選択的な増殖抑制メカニズムは?」という問いを明らかにすることにより、<ERK依存的細胞死>に関わる細胞内シグナル伝達経路を浮き彫りにすることである。今年度は、ACA-28およびそのリード化合物であるGT-7が各種のRas変異を有する膵臓がんに対して細胞死を誘導できることを証明した。特にKRasQ61H変異を有する膵臓がん細胞であるT3M4に対して、ERK依存的細胞死を誘導できることを世界で初めて証明した。一方、KRasG12V変異を有するPANC-1細胞はGT-7依存的な細胞死に抵抗性を示すこと、AKTの活性化がGT-7依存的な細胞死抵抗性のメカニズムであることも証明した。本研究により、KRAS変異を有する膵臓がん細胞に対してGT-7は有効なERK依存的細胞死を誘導するとともに、GT-7とAKT阻害剤の併用が膵臓がんの新たな治療戦略となりうることも明らかになった。GT-7を添加したKRAS変異膵臓癌細胞では、GT-7がERKの細胞質でのリン酸化を誘導するとともに、リン酸化されたERKの核内移行を促進することも明らかになった。このことは、GT-7の作用機構の理解を推進し、GT-7の標的分子解明に貢献する成果である。ACA-28およびGT-7の標的分子に関しては、ACA-28にビオチン修飾を行った標識化合物を合成し、プルダウン実験と質量分析の手法によりACA-28結合タンパク質を複数同定した。また、リン酸化プロテオミクスの手法を用いてACA-28の標的候補因子群を同定している。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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