研究課題
今年度は,Alport症候群の原因タンパク質Type IV collagen α345の三量体特性に基づく遺伝子型・表現型相関のバリデーションを行なった.これまでに数百種類のAlport症候群の原因変異が報告され,変異によって病態の重症度が異なることがわかっている.しかし,実際の原因タンパク質α345(IV)の三量体形成能と病態重症度の相関は不明であった.そこで以前筆者らが確立したSplit NanoLuciferase (split NanoLuc) による細胞ベースのα345(IV) 三量体評価系を用いて,病態重症度の異なるα5(IV)の9変異と非病原性と思われるSNPs 1変異 (G953V) について三量体の評価を行った.その結果,重症変異はα345(IV)の細胞内三量体形成または細胞外分泌が著しく低下したのに対し,軽症変異のほとんどはわずかな細胞外分泌低下に留まっていた.したがって,臨床の重症度の大部分はα345(IV) 三量体形成・分泌能により規定されることが明らかになった.他方,SNPsであるG953V変異では三量体の変化がみられなかったことから,本評価系を用いた非病原性・病原性の区別が可能であると考えられた.そこで,巣状分節型糸球体硬化症 (FSGS) コホートから特定した17の変異について同様のα345(IV) 三量体形成・分泌能を評価したところ,病原性として既報の9変異のみで三量体分泌の障害を検出した.以上の結果より,Split NanoLucによるα345(IV)三量体評価系が患者重症度の解釈や病原性変異の同定に重要なエビデンスを提供しうることを明らかにした(Kamura et al., Kid Int Rep. 2020).
2: おおむね順調に進展している
Alport症候群の原因タンパク質Type IV collagen α345の三量体特性に基づく遺伝子型・表現型相関のバリデーションは,本研究で達成するべき一つの課題であり,今年度,予定通り進行した.また,三量体形成や分泌を促進する化合物や新規モデルマウスの作成についてもすでに研究開発が進んでおり,次年度以降に成果の発表に向けて取り組んでいる.
本研究では,①α345 (IV) 異常による特徴を多面的・階層的に統合解析し、AS の重症度の推測システムを構築すること、②HTS 評価系と独自のAS創薬基盤 (新規マウス、患者iPS細胞由来腎オルガノイド) を活用したリード化合物を見出すこと、③他の慢性腎臓病におけるα345 (IV) の非翻訳領域変異に着目した基底膜脆弱性獲得メカニズムを解明することを目的とし、革新的なRenal Precision Medicine基盤構築に挑戦する。すでに,①を達成したことから,今後は,②および③の課題について促進する.準備状況等は問題ない.
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 4件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
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doi:10.1038/s41598-020-61148-2
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https://research-er.jp/articles/view/87078