研究課題/領域番号 |
19H03381
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
鈴木 良明 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 講師 (80707555)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | カルシウムシグナリング / 血管平滑筋 / カベオラ / CaMKK2 / 蛍光イメージング / 興奮転写連関 / 血管リモデリング |
研究実績の概要 |
1)血管平滑筋細胞(VSMC)の興奮転写連関(E-T カップリング)に関与するCaMKファミリーの同定:①siRNAを用いた解析の結果、CaMKK2とCaMK1aが脱分極誘発性E-Tカップリングの主要因子であることを明らかにした。②熊本大学 荒木喜美 教授との共同研究により、CaMKK2-KOマウスを樹立した。 2)同定されたCaMKファミリー分子とカベオリン(cav)-1との相互作用の解明:①全反射蛍光顕微鏡による1分子可視化解析とProximity Ligation Assay (PLA)法により、VSMCのカベオラ内にVDCC/CaMKK2/CaMK1a複合体が形成されることが明らかになった。また、脱分極刺激により、CaMK1aがカベオラ内でCaMKK2によりリン酸化されて核内へ移行することを見出した。 3)E-TカップリングによってVSMCで発現誘導される遺伝子の解明:RNAseqにより、脱分極刺激誘発性のE-T カップリングが、白血球接着因子やサイトカイン、基質分解酵素など血管リモデリング形成促進遺伝子群を誘導することが明らかになった。各種阻害薬やcav1-KOマウスなどを用いた定量的PCR解析により、VDCC/CaMKK2/CaMK1a分子複合体がこれらの遺伝子誘導に関わることを見出した。 4)E-Tカップリングと平滑筋リモデリング疾患の関係性の解明:マウス腸間膜動脈標本に対して圧負荷を与えることで、E-Tカップリングが引き起こされた。そこで、腸間膜動脈結紮モデルを作製して、生体内で任意の腸間膜動脈に圧負荷をかけた。その結果、圧負荷が加わった腸間膜動脈においてCREBリン酸化、マクロファージの遊走、中膜肥厚が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初導入したCaMKK2-KOマウスの作製に不具合が見つかったため、ゲノム編集により新たにCaMKK2-KOマウスを作製した。DNAシーケンス解析およびウェスタンブロッティングによりKOを確認した。 本年度の実験結果により、カベオラ内に形成されたVDCC/CaMKK2/CaMK1aがVSMCのE-Tカップリングに重要であることを明らかにした。また、定量的PCRによりRNAseq解析の結果の再現および上記分子複合体の関与を明らかにした。 ex vivoモデルと同様、in vivoモデルにおいても持続的な力学的負荷によりE-Tカップリングが生じることを見出した。これを足掛かりとして、遺伝子欠損および阻害薬投与により、in vivoで血管リモデリングが抑制されるか検証することが可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
1)VSMCのE-T カップリングに関与するCaMKファミリーの同定:CaMKK2-KOマウス由来の血管組織を用いて、脱分極誘発性E-T カップリングにどのような変化が生じるか検証する。 2)同定されたCaMKファミリー分子とCav-1との相互作用の解明:CaMKK2はカベオラに局在することで、VDCC由来のCa2+によって効率的に活性化されると仮定した。その検証のため、①gene-encoded Ca2+ indicatorで標識したCaMKK2をウイルスベクターにより初代培養VSMCに発現させて、カベオラ内のCaMKK2近傍のCa2+濃度を全反射蛍光顕微鏡で計測する。 3)E-Tカップリングと平滑筋リモデリング疾患の関係性の解明:cav1-KOマウス、CaMKK2-KOマウスに対して腸間膜動脈結紮モデルを作製して、これらの分子のE-Tカップリングに対する寄与をin vivoで明らかにする。また、野生型マウスでもモデルを作製し、各種阻害薬を投与して血管リモデリングを抑制するか検証する。 4)得られた研究成果をまとめて論文を作成し、国際誌に成果を発表する。
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