研究課題/領域番号 |
19H03382
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研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
江本 憲昭 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (30294218)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肺胞形成 / エンドセリン / 気管支肺異形成症 / 慢性閉塞性肺疾患 / 肺高血圧症 |
研究実績の概要 |
本研究は、出生後に肺胞形成に異常を示すエンドセリン(ET)-2遺伝子改変マウスをツールとして用い、血管内皮細胞と肺胞上皮細胞のクロストークによる肺胞成熟過程に着目して、呼吸の開始が肺胞の組織幹細胞を刺激して組織の再構築を促すメカニズムの解明を目指すとともに気管支肺異形成症の新たな病態を解明することを目的とするものである。 2020年度は、ET-2が生体内で作用する受容体の同定を試みた。予備的研究の結果、ETA受容体が候補となったため、ETA受容体を時間依存的に欠損できるマウスを作出しその表現型を解析した。その結果、出生直後のETA受容体欠損マウスで肺胞形成に異常が認められ、ET-2-ETA受容体軸が肺胞形成に重要であることが明らかとなった。 また、2019年度に得られた結果に基づき構築された新たな仮説である「ET-2とET受容体の相互作用が肺における神経堤細胞由来組織を介して肺胞成熟過程に関与する」の検証を試みた。肺における神経堤由来細胞のひとつに肺内因性神経節が知られており、まず神経堤細胞由来の神経細胞に焦点を絞り解析を進めた。しかし、神経堤に由来する神経細胞に特異的なプロモーターを用いてETA受容体を欠損したマウスはET-2遺伝子欠損マウスの肺の表現型を再現できなかった。この結果、神経堤に由来する神経以外の細胞におけるエンドセリン系が重要であることが示唆された。 さらに肺上皮細胞特異的にET-2遺伝子欠損したマウスを用いて、肺線維症モデル、肺高血圧症モデル、慢性閉塞性肺疾患モデルを作製した。その結果、ET-2遺伝子欠損マウスではこれらの病態が増悪したため、ET-2が肺の病態に保護的に働くことが示された。また、成体においてET-2が肺神経内分泌細胞に発現していることを確認できたため、肺神経内分泌細胞特異的にET-2遺伝子を欠損するマウスを作出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子改変マウスの作出・解析は順調に進行しており、目標達成に確実に近づいているため。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に見出した肺線維症モデル、肺高血圧症モデル、慢性閉塞性肺疾患モデルのそれぞれの病態においてET-2が保護的に働く分子機構を明らかにする。 また、ET-2の発現を生体で直接観察できるレポーターマウスを作出・解析する。作出したマウスは、人工呼吸による呼吸管理下で2光子顕微鏡を用いてET-2の発現をリアルタイムに観察し、酸素濃度の変化によりどのような発現調節がされているか、さらにはその発現が肺胞形成や構造維持にどのような影響を及ぼすかを解析する。 さらに、シングルセルRNAシークエンシング解析を用いた網羅的なアプローチで、ET-2を欠損させることによって肺で変化する少数細胞の発現遺伝子を抽出し、表現型発現に関与する重要な細胞クラスタや情報伝達経路を同定する。
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