研究課題/領域番号 |
19H03386
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
伊藤 晃成 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (30323405)
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研究分担者 |
星野 忠次 千葉大学, 大学院薬学研究院, 准教授 (90257220)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | HLA / 薬物過敏症 / 動物モデル / 過敏症 |
研究実績の概要 |
ケラチノサイト(KC)はサイトカインの産生などを介して皮膚の免疫応答に強く関与することが知られている。また、ある種の疾患では、KCにおける酸化ストレスや小胞体(ER)ストレスなど、細胞内ストレスの関与が示唆されている。そこで、アバカビル(ABC)過敏症においても、ABCによりKCにおいてHLA多型依存的に細胞内ストレスが生じ、皮膚組織において免疫活性化が誘発される可能性を考え、これを実験的に検証することとした。また、ABC過敏症では、ABCがHLA-B*57:01のペプチド結合部位に結合し、その構造が変化することで、T細胞に提示されるペプチドのレパートリーが変化した結果、異常な免疫の活性化が生じると考えられている。それらのペプチドが一般にプロテアソームから生成されることも考慮すると、通常のプロテアソームとは異なるプロテアーゼ活性を有する免疫プロテアソームにより産生される特徴的なペプチドが、ABC曝露時のHLA-B*57:01依存的な免疫活性化に影響を及ぼす可能性が考えられる。以上の点を踏まえ、B*57:01-Tg由来KC(B*57:01-KC)を用いて、KCにおけるABCによるHLA多型特異的な細胞内ストレスとそれに伴うサイトカインや免疫プロテアソームによる特異的なペプチドの産生が、皮膚組織における免疫活性化・毒性の発症に関与しているかについて、検討を行った。その結果、ABCはKCにおいてHLA多型特異的にERストレスの下流でサイトカインの発現を上昇させること、ABCはKCにおいてHLA多型特異的に免疫プロテアソームの発現を亢進させることが確認できた。HLA-B*57:01を発現したKCにABCを曝露することでERストレスが惹起され、その下流でIFN-γを含む炎症性サイトカインや免疫プロテアソームの発現が亢進し、これが皮膚での炎症応答につながっている可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HLA*57:01とアバカビルの組み合わせで、ケラチノサイト(KC)におけるサイトカイン誘導に加え、免疫プロテアソーム誘導も新たに確認することができた。この結果は、本研究プロジェクトが掲げる、KCがHLA多型依存的に特定薬物に応答するとする仮説をさらに支持するものである。また、B*57:01以外の多型ついてもトランスジェニックマウスの作成準備を進めており、次年度には個体繁殖に進められる状況にあるため、進捗状況としては概ね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
皮膚毒性と関連する他のHLAリスク多型について遺伝子導入マウスを複数種作成し、対応する薬物投与時の反応について、 免疫学的、組織学的、さらには臨床診断基準との類似性の観点から解析する。特に今年度は、カルバマゼピン(CBZ)による重症薬疹と関連するHLA多型の導入マウスを用いた解析を中心に進める。各マウスからKCを単離し、薬物曝露時のストレスについて詳細に確認する。HLA多型構造自体の不安定性の確認については、in vitroにおける表面発現量やb2Mとの複合体形成の評価、ならびにin silico MDシミュレーションによって行う。以上、vivo、vitro、silicoの結果を統合し、”HLA多型の構造的特徴に基づいて皮膚特異的な薬物過敏症が生じる”という当初仮説を多面的に検証する。仮説の妥当性を検証しつつ、並行して、in vitro/in silico手法を駆使することで、複数のHLA多型と複数の薬物の組み合わせについて、過敏症に至るリスク有無を簡便に判別可能な方法論について、探索的にその構築を試みる。
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