研究課題
(1)KPCマウスの安定的維持管理の確立:本課題を遂行するにあたり多数のKPCマウスが必要となる。これまで分担者の佐野の協力を得てKPCマウスの譲渡を受けていたが、本年度は研究代表者のものでもKPCの繁殖・維持に着手した。佐野の指導の下、飼育・交配が安定しジェノタイピングにより実験に必要なKPCマウスの利用が可能となり、本課題の遂行の促進が可能となった。(2)腹腔内投与後の抗体医薬と脂質ナノ粒子の膵臓選択的移行メカニズムの解明:本年度は、KPCマウスへ免疫チェックポイント阻害剤である蛍光標識抗PD-L1抗体を静脈内(i.v.)および腹腔内(i.p.)投与し、6時間後の膵癌組織を回収し、組織切片について血管内皮マーカーであるCD31を蛍光免疫染色し観察した。i.v.投与した抗体は血管周囲に局在したのに対して、i.p.投与後の抗体は膵癌組織に広く分布していた。予備検討でリンパ管マーカーであるLyve-1を免疫染色したところ、i.p.投与後の抗体はリンパ管にも局在していることが示された。従って、KPCマウス自然発症膵癌において、i.p.投与により抗体医薬はi.v.投与と比較して多く移行し、またリンパ管を介する可能性が示唆された。(3)CTGF KDによる間質減少と温度感受性化の評価:CTGFのノックダウンを行うためKPC膵癌より樹立したKPC膵癌細胞を用いてsiRNAを選定した。温熱治療を行うため、担癌マウスを用いた局所温熱条件を検討した。分担者の新留が調製した金ナノロッドを担癌マウスへ投与し、近赤外光の照射し、サーモメータ―にて腫瘍局所温度を、直腸より深部体温を測定した。50~55℃で10分間にわたって腫瘍組織のみを局所温熱治療する条件を確立した。
2: おおむね順調に進展している
腹腔内投与後に膵臓、膵癌組織へ抗体の移行量が静脈内投与と比較して飛躍的に向上したが、Fab抗体を用いても同様の傾向があり、Fc受容体を介した移行の可能性は低く、免疫組織染色の結果からリンパ管を介した移行が示唆され、メカニズムの解明は順調に進んでいる。当初はKPCマウスについて分担者の佐野から供与を受けていたが、研究促進のため代表者のもとでも繁殖・維持を開始しKPC個体数が飛躍的に得られるようになり研究が大きく進んだ。また局所温熱治療条件の確立に加え、温熱後の腫瘍の免疫細胞について、フローサイトメーターを用いたT細胞やTreg細胞の評価が可能となった。またCTGF阻害に必要なsiRNAの選定も完了した。以上より、本課題は概ね順調に進展していると判断した。
本年度は抗体医薬の膵癌組織への移行メカニズムを検証したが、今後は脂質ナノ粒子についても、静脈内投与、腹腔内投与での膵癌組織への移行についてin vivo/ex vivoイメージングや免疫組織染色により比較解析し、腹腔内投与によりナノ粒子についても膵癌へ移行が大きく向上することを実証する。またin vivo膵癌組織のけるCTGFノックダウンと、膵癌間質の減少を検証する。過去に抗CD40抗体のKPCマウスへの投与により膵癌間質の減少が報告されており、予備検討で同様に間質の減少を確認できたため、これをポジティブコントールとする。また温熱治療と併用する免疫チェックポイント阻害剤についても、抗PD-1,PD-L1,CTLA4抗体などを候補として選定を進める。
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