研究課題/領域番号 |
19H03391
|
研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
松永 民秀 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 教授 (40209581)
|
研究分担者 |
岩尾 岳洋 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 准教授 (50581740)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ヒトiPS細胞 / 小腸上皮細胞 / 高分子化合物 / ジェランガム / 腸管オルガノイド |
研究実績の概要 |
ヒトiPS細胞の小腸上皮細胞への分化誘導法の確立として高分子化合物の影響を明らかにするために、セルロース、キチン及びジェランガム誘導体であるFP001及びFP003を腸管上皮細胞への分化誘導時に添加し、マーカー遺伝子の発現を解析することによって分化に対する影響を検討した。その結果、FP001及びセルロースの添加によりVillin1、 MDR1、PEPT1、CYP3A4及びPXRの発現上昇が認められた。また、FP001添加で小腸上皮細胞マーカー、薬物トランスポーター、薬物代謝酵素のmRNA発現が有意に増加した。さらに、Villin、PEPT1、SGL1、P-gp及びBCRPのタンパク質発現並びにCYP2C19活性も有意に増加することを明らかにした。FP001添加で細胞数の増加が認められたが、細胞周期の変動解析より細胞増殖に影響しないことが示唆された。また、老化細胞の割合とIntegrin α5が上昇したことから、細胞のアノイキスを抑制することが示唆された。FP001は、細胞・マトリクス間接着の喪失を制御し、細胞死を抑制することで、結果として小腸上皮細胞の成熟化と細胞数の増加をまねくことが示唆された。また、セルロースやジェランガムは難消化性の多糖類であり、消化管内容物として存在することから、in vitroにおいても腸管上皮細胞の機能亢進・維持に効果があることが示唆された。 腸管オルガノイドについては、これまで嚢胞状の形態であったものが、培養法の検討により浮遊培養においてもBudding と呼ばれる複雑な組織を創出することが可能となった。また、マーカーの発現及び機能も嚢胞状のものと比較して高かったことから、高機能な腸管オルガノイドの作製が可能となった。 免疫細胞としてマクロファージとの共培養系について検討を行っており、炎症性サイトカイン等の影響については今後検討する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒトiPS細胞から小腸上皮細胞への分化誘導並びに腸管オルガノイドの作製法の検討においては、計画以上の進展を得ることができた。一方、灌流による流体剪断応力を負荷によるヒトiPS細胞由来小腸上皮細胞及び腸管オルガノイドの形態及び薬物動態/毒性試験への影響を静置培養と比較し、灌流培養の効果を明らかにすることに関しては十分な検討を行えていない。また、蠕動運動を模倣した伸展刺激デバイスの開発については、伸展刺激の基材・方法の検討を進めており、試作品ができたところであるが、伸展刺激の細胞の形態及び薬物動態/毒性試験に及ぼす影響についての検討は行っていない。
|
今後の研究の推進方策 |
腸管オルガノイドのさらなる高機能化並びに二次元培養法の開発を行い、デバイスに搭載することを考慮して利便性やスループット性を高める検討も行う。また、免疫細胞としてマクロファージ共培養下におけるLPSや炎症性サイトカイン類の影響について検討を行い、炎症性腸疾患を反映するモデルの構築が可能かについて検討する。腸内細菌叢との共培養系の構築のために、酸素濃度を任意に調整できるシステムを設計し、それらの条件下で小腸上皮細胞や腸管オルガノイド由来の細胞が培養可能かについて予備的な検討を行う。また、伸展刺激の試作品を用いて細胞の形態及び薬物動態/毒性試験に及ぼす影響を検討し、静置培養と比較する。
|