核酸医薬は、その有効性が示されつつあり、臨床開発も増加している。しかし、核酸医薬はその全てが注射薬であり、投与時の痛みとともに、重度の注射部位反応が問題となっており、安全性・低侵襲性・利便性に立脚した経口薬の開発が望まれる。本研究においては、申請者の専門である家族性高コレステロール血症(FH)ホモ接合体を対象疾患として、より安全で使いやすい、経口型核酸医薬の新規基盤を構築することを目的とする。具体的には、核酸医薬の①腸溶性カプセル化、②腸管吸収を促進する分子の探索、③標的組織までの動態制御リガンドの修飾、を検討することで、核酸医薬の経口投与を可能にする技術の構築を行った。 ①核酸の水溶性が高さを考慮し、水溶液を封入可能な3層構造のカプセルを用いることとした。核酸の投与液として用いる生理食塩水を封入し、胃酸と同程度の酸性溶液の耐性を確認したところ、経口投与後、腸管への移行に要する時間は十分に安定であることが明らかとなった。 ②本検討では、腸管吸収を促進する分子について、併用型とコンジュゲート型の両面から探索を行った。併用により腸管から全身への移行効率を高め、肝臓での有効性を向上する分子は見出したものの、核酸へのコンジュゲートにより吸収を促進する分子は、望む効果を示すものの取得に至らなかった。 ③本研究では、FHの治療を目的としており、肝臓におけるapoB mRNAを標的としたため、核酸分子の肝臓への送達を可能とするGalNAcコンジュゲート体を作成した。 ①②③の結果を統合し、GalNAcコンジュゲート型核酸医薬および腸管吸収促進分子を腸溶性カプセルに封入し、マウスに対して経口投与実験を実施した結果、安定した肝臓における遺伝子発現抑制活性を得ることに成功した。 以上の研究から、侵襲性が低く患者が使いやすい核酸医薬を実現するための重要なデータが得られたと考える。
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