研究課題/領域番号 |
19H03394
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡田 康志 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (50272430)
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研究分担者 |
神原 丈敏 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 上級研究員 (40451637)
池田 一穂 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 上級研究員 (20642565)
池崎 圭吾 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (10722960)
榎 佐和子 (苙口佐和子) 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (50467635)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 分子混雑 / キネシン / 小胞輸送 / 軸索輸送 |
研究実績の概要 |
細胞質のタンパク質濃度から計算すると、その平均距離は10nm程度とタンパク質の大きさと同程度である。このような分子混雑環境の中で、直径100~1000nmの小胞などが動く際には、水(および水に近い希薄溶液)中の1000倍以上の抵抗を受けると予想される。にもかかわらず、細胞内の小胞輸送速度は、in vitroでの速度よりもむしろ速く、5~10倍にも達することがある。これが本研究の対象となる中心的なクエスチョンである。 この問に答えるために、本研究では、トップダウンとボトムアップの2つのアプローチを採る。トップダウンのアプローチでは、培養神経細胞を用いたスクリーニングで小胞輸送速度を制御する分子機構の解明を目指す。ボトムアップのアプローチでは、細胞質の分子混雑をin vitroで再現する実験系を構築し、小胞輸送の力速度関係の精密な解析を行う。これと並行して、細胞内混雑環境での小胞輸送について、ミクロ系の統計力学に基づく理論的な解析と、細胞内混雑環境における一分子計測のための計測技術開発を行う。 2019年度には、以下を行った。 トップダウンのアプローチのために、マウス初代培養神経細胞を一定のパターンに配列させて培養するためのデバイスの作成と培養条件の検討を行った。これは、イメージングにより軸索内の小胞輸送速度を計測し、スクリーニングを行うために重要なプラットフォームである。 ボトムアップのアプローチのための技術開発では、主に細胞内混雑環境での一分子計測技術の開発を行った。時間分解能1ミリ秒以下、空間精度10nm以下の時空間分解能での一分子計測を行うための計測技術の開発や、細胞内での分子運動の解析手法の開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究遂行に必要な基盤技術の整備の段階であるが、当初計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定通りに計画を進める。 すなわち、トップダウンのアプローチについては、2019年度に構築したプラットフォームを用いて、スクリーニングを開始する。また、ボトムアップのアプローチについても、2019年度に開発した計測技術を用いて、アフリカツメガエル卵抽出液やその他の分子混雑環境のin vitro再構成で広く用いられている標準的な実験系に適用し、これらの再構成系と生きた細胞の中の細胞質環境の違いを定量的に計測する。 しかし、コロナウイルスの流行とそれに対する緊急事態宣言の発令などにより、本研究計画の実施機関である東京大学および理化学研究所は4月初めから閉鎖されており、実験が停止してしまっている。今後、研究活動が再開できるものと期待しているが、実験停止期間に応じた研究計画の遅れは避けがたい。また、2020年冬シーズンには第2波の流行により再び実験停止となる可能性も無視できない。その際に実験が完全停止しないように、自動計測技術やリモート実験技術などの開発を進めたい。
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