研究実績の概要 |
細胞の形づくり、極性形成は、細胞の骨組みである微小管ネットワークがどのように形成されるのかに依存する。そのため、細胞内では微小管の構成タンパク質であるα-,β-tubulinの自然重合は抑制されており、何らかの微小管結合タンパク質が微小管重合開始を厳格に制御している。これまで、γ-tubulin複合体が中心体を形成することにより、その役割を果たすことが知られていたが、中心体とは関係なく重合する微小管も様々な細胞で見出され、その重要性が明らかになってきている。我々は今回、微小管マイナス端結合タンパク質であるCAMSAP2が、中心体非依存性の微小管重合を制御することを初めて明らかにした。CAMSAP2は、低濃度のα-,β-tubulinと共存することで、微小管の重合核形成を促進すること、また、その重合核が成長して星状体様の構造を形成することを明らかにした。さらにクライオ電子線トモグラフィーなどを用いた微細構造解析により、γ-tubulin複合体とは全く異なるCAMSAP2による微小管重合モデルを提唱した。CAMSAP2は、α-,β-tubulinと相互作用してα-,β-tubulinの縦方向の結合を促進し、縦に整列した繊維構造であるプロトフィラメントのリング形成を誘導する。これら中間体がさらにα-,β-tubulinの横方向の相互作用を誘起してシートを形成する。シートが微小管形成時の重合核となり、微小管重合へのエネルギー障壁を低くし、微小管伸長を促進する。この反応と並行してCAMSAP2を中心とした星状体様構造も形成される。反応が進むと、星状体様構造同士が微小管によりつながれた微小管ネットワークが形成される。微小管ネットワーク形成後、CAMSAP2は微小管の末端へと再配置され、微小管の末端を保護する。
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