研究課題/領域番号 |
19H03402
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
美津島 大 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (70264603)
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研究分担者 |
西井 淳 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (00242040)
石川 淳子 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (30570808)
崎本 裕也 山口大学, 大学院医学系研究科, 講師 (40634390)
木田 裕之 山口大学, 大学院医学系研究科, 講師 (70432739)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 学習・記憶 / シナプス可塑性 / 多ニューロン発火活動 / 海馬CA1ニューロン / GABAA受容体 / AMPA受容体 / 自己エントロピー / AI・深層学習 |
研究実績の概要 |
海馬はいつどこで何があったか、エピソード経験の学習に必要不可欠である。本研究では成熟雄性ラットに海馬CA1に記録電極を植え込み、自由行動状態におけるin vivo多ニューロン発火活動を記録した。馴化したホームケージ内で記録を開始し、300Hz~10KHzの周波数成分によりスパイクを抽出して多ニューロン発火活動を捉えた。15分間ホームケージ内で自発発火活動を記録した後、情動性、社会性、新奇性など、異なる4種類いずれかのエピソードを10分間経験させた。すると、多ニューロンにより形成される自発性高頻度発火活動(super burst)がエピソード経験中に何度も発生し、継続時間、スパイク頻度、発生数は経験内容に特異的である事実が判明した。さらに、最初のsuper burst発生の数分後から、約50msecの短時間にスパイクが同期するripple様発火活動と、発火活動の乏しいsilent periodが何百何千と繰り返し発生し、繰り返しパターンはエピソード終了後も数十分間維持された。ripple様発火活動の振幅、継続時間、弧長、ピーク数について解析した所、1. 記録されたripple様発火活動は全て異なる形状を示すこと、2. ripple様発火活動の形状を解析して多様性分布を解析すると、多様性の分布領域は経験内容に特異的であることが判明した。 エピソード経験30分後に海馬スライスを作成し、経験依存的なシナプス可塑性についても解析した。TTX存在下でCA1錐体細胞にパッチクランプを行い、単一シナプス小胞のグルタミン酸によるAMPA受容体を介した興奮性シナプス電流の振幅・頻度と、GABAによるGABAA受容体を介した抑制性シナプス電流の振幅・頻度の4パラメータを単一細胞毎に取得した。CA1細胞群の多様性を4次元仮想空間で解析する事で、シナプス可塑性も経験内容に特異的である事実も判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多次元仮想空間上に複数のパラメータをプロットし、多様性が示す分布領域を解析した。異なるエピソード間の違いをMANOVAを使って統計計算した所、自発性高頻度発火活動(super burst)、ripple様発火活動、シナプス可塑性の3事象で、過去のエピソード経験内容に特異的な変化が見られる事実をはじめて明らかにした。本研究結果はBioRxivにpreprint版を公表し、世界の研究者から既に4000件を超える閲覧実績を得ている。(doi: https://doi.org/10.1101/2019.12.30.891259)
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今後の研究の推進方策 |
従来のデータ解析において、統計学やノンパラメトリック手法を用いることが多く、その際にデータの特徴抽出方式によって、データの統計・解析結果が大いに異なる。本プロジェクトにおいては、AI技術の最先端手法である深層学習技術を用いて、データの特徴量を自動的に抽出することより、海馬の集団的時空間発火パターンを分類・識別する。具体的には以下のソフトウェアパッケージ及び深層ニューラルネットワークを用いる。1.Kerasニューラルネットワークライブラリ 2.敵対的生成ネットワーク(GAN) 3.畳み込みニューラルネット(CNN) さらに、経験前後や異なる経験間を網羅的に比較分析してネットワークモデルを作成し、不明の経験情報の推定も試みる。また、経験24時間後に行動解析を行い、エピソード学習の成立を確認する。 Super burst、ripple様発火活動、学習成立との因果関係も立証する必要がある。海馬交連に干渉電極を植え込んでおき、4種いずれかのエピソードを10分間体験させる。経験特異的な発火活動の発生を捉えた直後10 msec以内に干渉刺激してsuper burstやripple様発火活動の成立を阻害し、学習成立の有無を確認する事で因果関係を明らかにする。さらに、多様性の観点からエピソード経験が海馬CA1のripple様発火活動やシナプス可塑性に及ぼす影響を解析し、自己エントロピーの変化を求める事で経験情報量を定量化し、符号化ルールの解明に役立てる。
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