研究課題/領域番号 |
19H03403
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
藤原 祐一郎 香川大学, 医学部, 教授 (20532980)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | イオンチャネル |
研究実績の概要 |
生体がpHを感じたり、電圧を感じたりする機構は、生命現象を営むうえで最も基本的なセンサー機能でその分子メカニズム解明の必要性が叫ばれている。 本申請研究はそのメカニズム解明を目的として、本年度は『基盤となる、センサーダイナミクスの解析(電気生理&イメージング)』を行った。 (1)H+電流(イオンの動き)とゲート電流(蛋白質の動き)、各々を電気生理学的に測定し、膜電位/pHセンシングからH+透過まで一連のプロセスを定量的に解析した。 ①H+電流のみが観測される野生型Hv、②H+電流とゲート電流両方が観測される変異体チャネル、③ゲート電流のみが観測される変異体チャネル、それぞれをツメガエル卵母細胞に発現させ二本刺し膜電位固定法を用いて、ゲート電流およびH+電流に対して、電流-電圧関係、膜電位依存性、pH依存性といった基本となる電気生理学的パラメターを定量的に解析した。ΔpHと膜電位感知機能(ゲート電流)との関係性を検討した。 (2)電位センサーの膜電位やpH変化に応答した構造変化を観測した。 Hvチャネルに蛍光ローダミン試薬をCys架橋により結合させ、電位センサーの動きを蛍光シグナルの変化により測定した。ローダミン架橋では細胞外領域から簡便にラベルを導入でき、人工蛍光アミノ酸導入法ではローダミンがアクセス出来ない細胞内領域までラベルを導入することが出来る。いろいろな部位から蛍光シグナルを測定することにより、膜電位やpH変化に応答して動く電位センサーの細胞膜に相対した移動距離を解析した。構造上にマッピングすることで、動的構造変化を解析をめざした。内容は、日本生物物理学会中四国支部会にて口頭発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基盤となる、Hvチャネルのセンサーダイナミクスの解析(電気生理&イメージング)を行うことができたため。この基盤となる解析手法を活かして次年度以降の研究を飛躍的に伸展させることができるため。研究内容は、日本生物物理学会中四国支部会にて発表することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
『センサーの探索、理論の構築と応用展開』 (1)pHセンサーを探索し膜電位感知機能との関連を探る。 pHを感じる仕組みの一端を解明するためにpHセンサーの探索を行う。膜電位センサー機能との機能協関を知るために、pH感受性が変化する変異体、ゲート電流が出現する変異体を用いて解析を行う。Hvチャネル分子内の塩橋を攪乱することでpH-insensitiveとなる変異体を予備実験で得られている。しかしながらpHを感知する仕組み、センサー本体は不明である。pH勾配に影響を受けない他の電位センサー型蛋白質との配列および構造の比較から、変異体やキメラ体を作製しパッチクランプ法を用いて細胞内外のpHをコントロールした条件下で解析をすすめ、pHセンサーを構成する残基群を明らかにする。 (2)他の電位依存性チャネルの電位センサードメインとの機能の普遍性を明らかにする。 イオン透過と完全に独立した電位依存性K+チャネルの電位センサー(Kv)とイオン透過機能を有する電位センサー(Hv)で互換性はあるのだろうか? KvはH+透らずpHにも影響されない。HvとKvで電位センサーを入れ替え、電気生理学測定・光学的観測を行い、両チャネルを比較検討しながら解析を進め、電位センサー型分子一般に通じる理論の構築を目指す。KvにpHセンサー機能を与えるなど、新規センサーチャネルを自在に創製することを目指す。過去に最も研究の進んでいるKv電位センサーとの比較により、なぜHvチャネルはユニークなセンサー特性を有するのか?を明らかに出来る期待が持てる。
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