生体がpHを感じたり、電圧を感じたりする機構は、生命現象を営むうえで最も基本的なセンサー機能でその分子メカニズム解明の必要性が叫ばれている。 本申請 研究はそのメカニズム解明を目的として、本年度は『基盤となる、pHセンサーを探索し膜電位感知機能との関連を探る』を行った。 (1)ユニークなHvチャネルのセンサー機能は普遍性を持つのか?種々の膜電位センサー型分子は共通の機構で駆動するのか?互換性を確かめる実験を行った。Hvを移植してチャネルに新たなセンサー機能を与える試みを行った。他の電位依存性チャネルの電位センサードメインに解析をすすめpH感受性に迫る試みを継続して行った。これまで世界で最も研究の進んでいる電位依存性K+チャネルの 電位センサー(Kv)を用いて実験を行った。 KvはH+透らずpHにも影響されない。変異体を作成し、KvにpHセンサー機能を与えるこ試みを行い、pH感受性の高いKvチャネルを作成することに成功した。裏返しとして、HvチャネルのpHセンサー機能を変異導入によい消失させる試みを行い、数種類の脱pHセンサー機能Hvチャネルを手に入れた。Kv電位センサーとの比較により、なぜHvチャネルはユニークなセンサー 特性を有するのか?を明らかにできるのか考察を行った。 (2)計算科学への展開をはかり、膜電位センサー機構を論理的・視覚的に理解した。近年我々の報告した膜貫通領域について分子動力学計算をテンプレートに、今回の研究で得られた情報を導入しモデル構築・シミュレーションを行った。膜電位/pH感知機構の分子構造変化、理論的背景を目に見える形で理解し、チャネルセンサー機構の理解につなげた。 (3)センサー機構と脂質や核酸などの小分子の相互作用を解析し、pHセンサー機能、膜電位センサー機能との関連を調べた。今後、Hvのマルチモーダルセンサー機能の解明につながることが期待される。
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