研究課題/領域番号 |
19H03406
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福永 浩司 東北大学, 薬学研究科, 教授 (90136721)
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研究分担者 |
松崎 秀夫 福井大学, 子どものこころの発達研究センター, 教授 (00334970)
篠田 康晴 東北大学, 薬学研究科, 助教 (70806405)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム障害 / オキシトシン / アミノレブリン酸 / 遺伝子発現 / ミトコンドリア異常 |
研究実績の概要 |
自閉スペクトラム症(自閉症)は社会性障害を主徴とする神経発達障害である。私達はこれまでに自閉症モデルラットの社会性行動障害が天然アミノ酸(アミノレブリン酸)とオキシトシンの経口投与により改善することを報告した(Matsuo et al, Neuropharmacology, 2020))。本研究では,アミノレブリン酸とオキシトシンの社会性行動改善に関与する遺伝子を同定するために、バルプロ酸胎児期暴露マウス(自閉症モデル動物)を用いて神経機能改善に関わる遺伝子を網羅的に解析した。その結果、これまに自閉症との関連が示唆されている9個の遺伝子がバルプロ酸胎児期暴露マウスで変動しており、その変化がオキシトシン鼻腔内投与で完全されることを確認した。ヒト臨床研究で行われている鼻腔内投与で得られた本成果は作用機序を解明するために重要な知見である(論文準備中)。中でも KCNJ13、SOSTDC1遺伝子は自閉症を深く関わるERBB4、SHANK2と機能的に関連していることから、今後その相互作用も解明することは、自閉症のリスク因子を同定するために重要である。一方、アミノレブリン酸ではこれらの遺伝子発現異常は改善されない。Eif2s3y 遺伝子の発現低下が改善された。この遺伝子は神経のタンパク質発現に関与する遺伝子であり、今後はその下流のタンパク質について探索する。次に、自閉症患者の単核球を用いフィラックスアナライザーによるミトコンドリア機能測定システムの構築を行なった。単核球の単離、培養条件を検討し、生細胞の収率を20-30%に高めることに成功した。この条件でミトコンドリア機能を測定できることを確認した。今後は例数を増やして、ミトコンドリア機能に対するアミノレブリン酸の効果を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究で、自閉症マウスモデルを用いて、オキシトシン とアミノレブリン酸の感受性遺伝子を同定することができた。ヒト末梢血単核級を用いて、フラックスアナライザーによりミトコンドリア機能を解析することに成功した。この方法により、患者の病態とミトコンドリア機能異常との関連、そのマカニズムを解明できる。
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今後の研究の推進方策 |
私達はミトコンドリア機能に着目して、自閉スペクトラム症のバイオマーカーの決定と治療薬の開発を行う。松﨑秀夫博士(福井大学)との共同研究で、フラックスアナライザーによる末梢血球細胞でのミトコンドリア機能測定に成功した。この方法はバイオマーカー探索と治療薬の効果判定に有益であり、臨床研究にフィードバックできる。さらに、治療候補薬アミノレブリン酸についてはその治験薬を製薬企業から供与されるように研究チームを立ち上げた。最終年度には治療候補薬の作用機序と臨床研究を加速させる。
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