研究課題
アミノ酸は、様々な生体反応の基質であると同時に、シグナル分子としてmTOR活性化を介した細胞代謝・細胞機能制御に寄与する。本研究は、機能的に特に重要なロイシンに着目し、新たに存在を見出した細胞膜受容体の分子実体を解明しつつ、輸送体と受容体を介したアミノ酸シグナリング機構の全体像を明らかにすることを目的として実施した。最終年度にあたる2021年度は、前年度までに実施した細胞膜画分の比較定量プロテオミクスと、細胞膜型ロイシン受容体特異的リガンド刺激条件下の比較定量リン酸化プロテオミクスにより見出したロイシン受容体の候補因子群について、遺伝子ノックダウンをおこない、アミノ酸シグナリングにおける機能評価を継続して実施して受容体の同定を試みた。がん細胞においてロイシンを含む必須アミノ酸取込みの中心を担うアミノ酸輸送体LAT1下流のアミノ酸シグナリング機構については、LAT1阻害薬で長時間処理した際のシグナル変動を前年度までに既に報告したが、2021年度は、短時間処理した際のシグナル変動を比較定量リン酸化プロテオミクスにより新たに明らかにした。加えて、阻害薬処理下の細胞内アミノ酸濃度の経時的な解析を実施し、特定の種類のアミノ酸が示す特徴的な変動を見出した。また、阻害薬処理によってmTORを含む翻訳開始を制御するシグナル経路が影響を受け、実際に全般的な翻訳抑制を生じることを明らかにした。以上の成果により、がん細胞においてアミノ酸輸送体LAT1が制御しているシグナリング機構と、それを遮断する阻害薬が細胞内のアミノ酸濃度に与える影響と、抗腫瘍効果の背景にある薬理作用としてのタンパク質合成の抑制を明らかにした。アミノ酸受容体とアミノ酸輸送体を標的とし、代謝制御によって優れた治療効果を示す抗腫瘍薬創薬に向けた基盤情報となる重要な知見を得た。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 3件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 2件、 招待講演 8件)
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