研究課題/領域番号 |
19H03408
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
西堀 正洋 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (50135943)
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研究分担者 |
和氣 秀徳 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 講師 (60570520)
勅使川原 匡 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 講師 (40403737)
阪口 政清 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (70379840)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | HMGB1 / トランスロケーション / 血管内皮細胞 / サイトカイン類 / 抗HMGB1抗体 |
研究実績の概要 |
組織損傷関連分子群(Damage-associated molecular patterns; DAMPs)の代表である核内因子High mobility group box-1 (HMGB1) は、起炎性刺激によって細胞外へ放出される。一方、申請者はHMGB1が生理的活性物質によっても、血管内皮細胞から分泌されることを明らかにし、生理機能調節に関与するバイオセンサーとしての機能に注目するに至った。すでに、HMGB1の放出反応は抗HMGB1抗体の添加で殆ど完全に抑制されることを観察し、ポジティブフィードバックの存在を推定している。本研究では、血管内皮細胞をモデル細胞として用いることにより、HMGB1の分泌過程を解明し、一連のサイトカイン産生における増幅機能、内皮細胞ホメオステーシスにおける意義、細胞質内における新規機能の全体像を明らかにする。 平成31(令和元)年度は、トロンビン刺激あるいはヒスタミン刺激によって、培養ヒト血管内皮細胞(EA.hy926)の細胞核から細胞質を経由して細胞外へHMGB1が分泌されることを明らかにした。ヒスタミン刺激によるHMGB1の分泌は、ヒスタミンの濃度依存的に生じ、ヒスタミン添加後時間依存的に進行した。4種類のヒスタミン受容体アンタゴニストの内、H1-選択的なアンタゴニストであるd-クロルフェニラミンのみがヒスタミン刺激によるHMGB1分泌を抑制し、またH1-受容体アゴニストの2-ピリジルエチルアミンがヒスタミンの作用を模倣したことから、HMGB1トランスロケーションに関与する受容体はH1-受容体であると結論された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HMGB1トランスロケーションに関与する受容体としてヒスタミンH1-受容体を同定した。
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今後の研究の推進方策 |
1.HMGB1トランスロケーションを制御する受容体系ならびにシグナルトランスダクションの同定: 研究代表者の西堀らは、LPSとTNF-αによるHMGB1トランスロケーションを強力に抑制する物質として、血漿タンパクHistidine-rich glycoprotein (HRG) を見出している。この制御系の実態を明らかにするため、血管内皮細胞のHRG とのインキュベーションによって生じる細胞内タンパクリン酸化の変化を網羅的に解析する。制御系についての情報が得られた後は、シグナル伝達特異的阻害薬を用いて、データの整合性を検証する。 2.ヒスタミンによる血管透過性亢進作用並びにアナフィラキシー性血管反応における細胞外放出HMGB1の関与: ボイデンチェンバーを用いて、血管内皮細胞分泌性のHMGB1が血管透過性亢進に関与するかどうかを予備実験で検討した。特異的抗HMGB1抗体の添加は、血管透過性亢進を抑制したことから、細胞外に分泌されたHMGB1が血管透過性亢進にも関与する可能性が強く示唆された。そこで、まず肥満細胞を活性化し、顆粒(ヒスタミン)分泌を惹起できるCompound48/80のラットあるいはマウスへの投与を試み、抗HMGB1抗体の前処理効果を評価する。次いで、in vivo 条件下にヒスタミンと抗原-IgE依存性に誘発された低血圧ならびに血管透過性亢進の抗HMGB1抗体前処理効果を検討し、情報を得る。抗体効果が陽性に出れば、アナフィラキシーショックの治療に、抗HMGB1抗体が適応できる可能性がある。 その他、以下の項目について研究を実施する。 3.細胞外分泌されたHMGB1の分子修飾についての検討 4.核移行シグナルを欠いたHMGB1 を用いた細胞質移行のメカニズム解析
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