研究課題
腫瘍抑制分子RASSF、および、RASSFと関係する腫瘍抑制シグナルHippo pathwayの破綻をもつヒトがんは、悪性度が高く、予後不良を招く。この事実は、これらの機能が腫瘍抑制機構として重要であることを顕著に示している。2020年度には、これらに関連して以下の成果をあげた。RASSFの一つであるRASSF6に結合する分子UNC119が活性型RASに結合して、RASとRASSF6の結合を強め、活性型RAS存在下でRASSF6-MDM2-p53 axisによる腫瘍抑制効果を惹起し、RASによる発がんを抑制する作用を示すことを明らかにした。Chemical biology手法により、ヒトがんの悪性化に寄与することが知られていたCSE1L(別名Exportin2)がHippo pathwayの標的分子であるTAZの細胞核移送に関わること、TAZとCSE1Lが協働的に作用してがんを悪性させることを明らかにした。細胞を熱ショックに曝露するとSRCが活性化し、Hippo pathwayの標的分子であるYAP1を負に制御するキナーゼLATSと脱リン酸化酵素を含む細胞質内構造が形成され、LATSの活性が抑制され、YAP1が細胞核に集積しNF-kBシグナルを増強することを見出した。以上は、いずれ従来、全く知られていなかった知見であり、RASSFとHippo pathwayの理解に貢献する成果である。
3: やや遅れている
2020年度はコロナ感染に伴う研究活動制限のため、当初予定していた実験、とくに動物使用実験が行えなかった。2020年度の終盤、コロナ感染が、小休止を得た時期に、遅れの一部を取り戻したが、予定していた実験の全てを行うことはできなかった。そのため、「やや遅れている」と評価した。
2020年度に予定していた研究費の一部を2021年度に繰り越し、遅れを取り戻すべく研究を遂行する。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Experimental Cell Research
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