令和3年度は、前年までに行った網膜におけるシングルセルRNAseq解析の詳細な情報処理を行った10x GenomicsのSeuratのプラットフォームを用いて、脊椎動物モデルの野生型と変異型の網膜における細胞種を高精度で分離することに成功した。これらの実験は複数個体行い再現性の高さも確認した。さらにエピジェネティックな理解を深めるために行ったシングルセルATAC-seq解析でもプロテアーゼによる網膜細胞の処理条件を工夫することで細胞種の同定に成功した。情報解析では、網膜におけるシングルセルATAC-seqで得られたピークのシグナルの定量化を行い、シングルセル発現解析のデータと照合したところ、多くの細胞種で特異的な遺伝子の発現パターンとATACseqのゲノム上のピークが強く関連することを示唆する結果を得ることができた。Seuratのパイプラインを用いてデータベース上に登録されている別のモデル生物の網膜におけるシングルセル解析の結果と比較し、今回発見した細胞種群との対比をおこなった。新たなサブタイプの細胞種が同定され、網膜の細胞種の多様性が明らかとなった。これらのデータを統合して網膜におけるシングルセルレベルでのトランスクリプトームのエピジェネティックな制御機構が明らかになった。これらのデータをまとめ、学会で発表した。また、論文の作成を行い専門科学雑誌に投稿を行った。現在、これらのデータから得られた情報をもとにさらなる情報解析をすすめている。
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