研究課題/領域番号 |
19H03421
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
仲野 徹 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (00172370)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 小分子RNA / DNAメチル化 / 生殖細胞 / レトロトランスポゾン |
研究実績の概要 |
精子形成においてレトロトランスポゾン遺伝子の発現を抑制するpiRNA(piwi-interacting RNA)のDNAメチル化機構における役割の解析、ならびにその過程におけるマウスPIWIファミリータンパク質のひとつであるMIWI2タンパク質の機能解析を精力的におこなってきた。 これまでに、MIWI2タンパク質が、de novo DNAメチル化因子と結合し、piRNA依存的なDNAメチル化に重要な機能を有することを報告してきた。その延長として、本年度は、胎生期の雄性生殖細胞において、MIWI2タンパク質に結合するMORC3の解析をおこなった。その結果、雄性生殖細胞特異的にMORC3を欠損するマウスでは、胎生期生殖細胞において、レトロトランスポゾン遺伝子の発現が抑制されることを明らかにした。また、そのマウスでは、piRNA前駆体の転写産物の減少が認められた。これらの結果から、MORC3はpiRNA産生の一次段階において重要な役割を有していること、さらに、その欠損マウスでは、piRNA産生が結果として減少するためにpiRNAの産生量が低下し、レトロトランスポゾン遺伝子の de novo DNAメチル化が抑制されるのがわかった。この結果は、piRNA産生の初期段階にMORC3が制御因子として機能することを示している。しかし残念ながら、その分子機構がMIWI2との結合と何らかの関係があるかどうかは不明なまま残された。また、この成果をScientific Report誌に報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた、① MORC3のde novo DNAメチル化における機能解析、② MIWI2に結合するCNOT1の精子形成過程における機能解析、③ DNAメチル化に異常のある精子が発生に及ぼす影響の解析のうち、①については「研究実績の概要」に記載のとおり順調に進捗し、論文発表をおこなうことができた。 ②については、CNOT1のpiRNA産生、ならびに、精子形成における機能を解析中であり、順調に進捗している。③については、直接的ではないが、piRNA依存的なレトロトランスポゾンのDNAメチル化に必須なDNMT3LをpiRNA依存的に欠損させたマウスの解析をおこなった。その結果、piRNAはDNAメチル化といった転写抑制のみでなく、おそらく転写後抑制にも機能しているという結果を得つつある。
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今後の研究の推進方策 |
① MORC3のde novo DNAメチル化における機能解析、② MIWI2に結合するCNOT1の精子形成過程における機能解析、③ DNAメチル化に異常のある精子が発生に及ぼす影響の解析、のうち、①は論文発表も終えたため終了とする。②については、継続して進行する。③の研究はDNAメチル化異常を精子に誘導することが困難であることがわかりつつある。そのために、③の研究に用いる予定であったトランスジェニックマウスの解析に方向を変更したい。
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